[小説:闇に舞う者] part232011年03月27日 20時32分06秒

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「御神体が応えてみたいだから、何か情報を引き出せそうね。」
話し込んでいる間に起きた変化を目にして、ティティスが笑顔と共に言葉を漏らした。
その呟きをチェルニーが頭の上に生やした猫耳を小刻みに動かしながら、敏感に聞き取っては更なる解説を求めて見上げてきた。
「好奇心旺盛な子だね。まだ時間が掛かりそうだから、もう1つ話をしてあげるよ。」
知識欲を絶やさない少女の頭を撫でながら、ルワンを横目に見る格好で向かい合わせに床へ座り込んだ。
「魔法には魔導力という力が必要なの。その魔導力は魔素から生み出す事ができるわ。」
チェルニーの視線が少し外れたのを合図に、説明を区切って反応を待ってやる。
「料理に火が必要で、薪を燃やして火を作るみたいな感じだね。」
先ほどティティスが見せた人差し指を口元へ当てるポーズを真似しながら、チェルニーが得意げに教えられた内容を例えてみせた。
「魔法を料理に例えるとそうなるわね。でも、今回は魔法を音楽に、魔導力を音に例えて説明をさせてもらうわね。」
飲み込みの早さに感心しながら、後々の説明に適した例えを提示すると、チェルニーは御頃良く了承してくれた。
「魔導力を音に例える時、魔素は両手とするの。」
言葉で説明しながらチェルニーの前で手を打ったり、擦り合わせたりして幾つかの音を出してみせた。
「手を使った音の出し方が色々とあるけど、手と手で音を出す事が基本ね。」
床を叩いて音を出した後で、指で十字を描きながら首を左右に振ってみせる。
「ここからがお待ちかねのルワンの話ね。あいつは凄く特殊で、音を出すための手が片方しか持っていないから、音である魔導力を生み出せない。さて、どうする?」
チェルニーへ向かった身を乗り出しつつ、小さな鼻先に指先を突き付けた。
チェルニーは困った表情を浮かべながら、ティティスの指をそのままに首を捻って考えていた。
思案する姿を眺めながら鼻先を突いて遊んでいると、我慢できずにチェルニーの手が伸びてきた所を逆に左手で掴んだ。
「これが答えね。」
そういうと同時に、掴んでいたチェルニーの手を右手で打って音を出してみせた。
キョトンとした表情を浮かべるチェルニーを楽しそうに笑いかけながら、何度も手を打ち付ける動作を繰り返した。
「相手の手を使って音を出すってこと?」
されるがままだったチェルニーから疑問混じりに解答が聞こえた所で大きく頷いてやる。
「その通りよ。だから、相手がいる時、つまりは戦闘中しか魔法が使えないの。」
「そんな事を言ってたけど、武器を変えたり、鎖を伸ばしたりは普通にしてたよ?」
「それはディーナが代わりに魔導力を提供してるのよ。だから、彼女が近くに居る時にしかやってないはずよ。」
少し納得が行かない様子で、チェルニーが生返事を返してきた。
「話を戻すね。さっきルワンは片手しかないと言ったけど、代わりに相手を利用するために惹き付ける特性を持っているの。」
「惹き付けるって、鼻ツンツンみたいに?」
「そう、相手が自分を意識していないと使えない特性なのよ。そして、神域の対話は相手を惹き付ける特性を応用したスキルなの。」
主題の説明に足が掛かった所で、ティティスは例の人差し指を口元へ当てる得意げなポーズを出た。

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