[小説:P★RS 半裸さん日記] part172013年02月24日 20時52分39秒

第一話がこちらになります。
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ディーナちゃんが照れすぎによるオーバーヒートから復帰すると、部屋に半裸さんとワリトちゃんの姿はありませんでした。
窓から差し込む日光は赤みを増していて、夕方が近いのだろうとぼんやり考えながら身を起こします。
部屋の中を改めて見回してみても半裸さんの姿は見当たらず、このまま夢オチに終わってしまいそうな不安を感じました。
身体に掛けられていた毛布を引き寄せて顔を埋めると、ほんのりと半裸さんの香りが残っています。
その香りを嗅いでいると、野良生活から比べたら夢のような1日が、現実に訪れたのだと実感できて落ち着きました。

ディーナちゃんが視線へ気付いて、バッと音を立てながら毛布から顔を離すと、ガードマザー君が部屋へ入ってきました。
『半裸さんはワリトちゃんと残りの磨きをこなしに行っているから不在』
ガードマザー君が頭上にテロップを出しながら、甘い香りのする紅茶を運んできてくれました。
「そ、そうか。」
ディーナちゃんが安堵の溜め息を漏らして苦笑しながら紅茶を受け取ります。
「言うなよ。」
視線を逸らしながら、適度に冷まされた紅茶を飲みながら呟くと肩を突かれます。
マザー君はディーナちゃんの視線を確認してから、テロップを表示して答えます。
『調子に乗せると面倒くさい。』
ディーナちゃんは全てを語る一言に失笑しながら、残りの紅茶も飲み干すとカップをマザー君へ渡しました。
「この毛布を選んだのアイツなのか?」
『不在中に目覚めた時に、不安がらないようにするためと言っていた。』
「そっか、何もかもお見通しって感じで気味が悪いな。」
口では悪態をつきながらも、表情はとても嬉しそうな笑顔を零していました。

ディーナちゃんがベッドから下りて、椅子へ座り直してくつろいでいると、半裸さんとワリトちゃんが元気に帰宅してきました。
「たっだいま~♪」
半裸さんはディーナちゃんが起きている事を確認すると、手を振りながら部屋へ入ってきます。
「もう大丈夫そうかな?」
半裸さんに満面の笑みを向けられて、ディーナちゃんは視線を逸らしながら首を縦に振りました。
「それは良かった。あそこまで照れに耐性がないと思わなくてさ。悪い事をしたね。」
そう語り掛けながら近付いてきて、優しく頭を撫でてきました。
「ところで、毛布はどうだった?」
「ふかふかで気持ちよかった。」
不意打ちの質問を予期していたので、動搖する事もなく、香りを話題に上らせない返答しました。
「それだけ?」
「他に、何があるのさ。」
半裸さんが追加してきた質問が探りを入れている気がしてので、頭を撫でていた手も振り払いながら聞き返します。
「君ならボクの毛布を掛けた事を怒ったりするかと思ったのだけど?」
半裸さんが小首を傾げながら、真っ直ぐに見詰め返してきます。
「別に嫌じゃない。」
疑って掛かった事へ罪悪感を覚えて、再び視線を逸らしながら呟いていました。

半裸さんとの会話が途切れた瞬間、逸らした視線の先に立っていたワリトちゃんが飛び付いてきました。
そのままディーナちゃんへ抱きつくと、猫がマーキングするように頬を擦り寄せてきます。
「え、な、なに?」
ディーナちゃんが困惑していると、ワリトちゃんが顔を正面から見据えてきます。
「ワリトちゃんは自分の匂いをどう思われているのか知りたいみたいだよ。」
半裸さんが補足説明を入れると、ワリトちゃんは大きく首を縦へ振ります。
「嫌いじゃない。」
ディーナちゃんの返答を聞いた瞬間、ワリトちゃんが再び頬擦りを再開しました。
「喜んで、いるのかな?」
「そうみたいだね。」
ディーナちゃんは困惑して、半裸さんは嬉ししそうに、それぞれ異なる意味の笑みを浮かべます。

[小説:P★RS 半裸さん日記] part162013年02月03日 18時27分37秒

第一話がこちらになります。
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半裸さんは14人のバトフレさんとの日課を済ませてリビングへ戻ると、倒れ込むように床へ座り込みました。
軽く咳き込む背中をワリトちゃんに撫でられながら、マザー君が運んでいたドリンクを一気飲みにしていきます。
ディーナちゃんはその光景を少し離れた場所から呆然と眺めていました。
「怪我が無かった事にされても痛いし、疲れもするの。休憩したら磨きを再開するから少し待っててね。」
半裸さんはぎこちない笑顔をディーナちゃんに見せながら、途切れがちな言葉を投げ掛けました。
「84戦5勝か。毎度の事だけど、派手に負け越しちゃっているね。」
半裸さんは戦績を確認すると、笑顔に恥ずかしさが混ざって苦笑へ変わっていきます。

「あれ、どうしたの?」
半裸さんがディーナちゃんのムスッとした表情に気付いて、心配そうに問い掛けます。
「なんで、笑っていられるのさ。」
ディーナちゃんの吐き捨てるような言葉に、半裸さんはキョトンとした表情を浮かべます。
「だから、こんな負けっぱなしで悔しくないのかって聞いているんだよ。」
ディーナちゃんは言葉に苛立ちを混ぜ込ませて、荒っぽい口調で言い放ちます。
言った直後に気まずくなって、驚いた表情を浮かべる半裸さんから目を逸らしました。

短い沈黙の後、半裸さんがゆっくりと立ち上がると、ディーナちゃんの頭を撫でながら話し掛けます。
「ボクは悔しくないよ。何もさせてもらえないで負かされる事も多いのは恥ずかしいけど、悔しいとは思わないよ。」
頭を撫でる手を休めずに、顔の向きを変えるよう優しく促していきます。
「バトフレさんはボクを笑わない。勝てれば嬉しいけど、毎日に相手をしてくれる事の方がもっと嬉しいよ。要するに、負けても満足しちゃってるの。」
ディーナちゃんは半裸さんの手付きが一段と優しく変わったと感じました。
「ディーナちゃんは勝ってほしかったよね。こんな格好悪い奴でごめんね。どんな言葉に言い換えても、諦めている事に変わりがないよね。」
聞こえる声に寂しさが混じっている事へ気付いて振り返えると、普段よりも柔らかい笑顔の半裸さんが居ました。

半裸さんはディーナちゃんを撫でる手が止めると椅子へ腰掛けて、ディーナちゃんに呼び寄せます。
渋々と近付いてきたディーナちゃんを抱き上げると、膝の上に座らせて後ろから抱き締めました。
「ディーナちゃんはさ。どうして勝ってほしいのかな?」
ディーナちゃんからの返答がないまま、ゆっくりと時間が流れていきます。
「気付いた?」
半裸さんが小さく呟くと、ディーナちゃんが耳まで真っ赤に染めていきます。
「家族はやっぱり格好良く居てほしいから、じゃないのかな?」
ディーナちゃんがプルプルと震え出して、恥ずかしさから逃げだそうにも抱き締められて動けません。
「赤の他人が負けても怒ったりしないよね。つまり、家族と思ってくれた証拠、そう思うと凄く嬉しいよ。」
ディーナちゃんは手足をばたつかせて逃げようとしますが、全く逃げる隙がありません。
耳元で囁かれる言葉に羞恥心が刺激され、最終的にボンッと盛大に蒸気を吹き出して目を回してしまいました。
ディーナちゃんは恥ずかしさをオーバーヒートさせた所で解放されて、床に両手をついて項垂れました。
ワリトちゃんが湯気を立ち上らせる頭に濡らしたタオルを載せて、半裸さんは微笑みながら内輪で扇いであげました。

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[小説:P★RS 半裸さん日記] part152013年01月20日 20時46分35秒

第一話がこちらになります。
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ロックキャノンから放たれた砲弾の閃光が収まると、半裸さんが両方の膝と手を床に付いた姿勢で倒れていました。
ディーナちゃんはディスプレイ越しに半裸さんの無事を確認すると、小さく安堵の溜め息を漏らしました。
その直後、フミさんにスポットライトが当てられて勝利が宣言されます。
ディスプレイの表示が消える同時に、半裸さんとワリトちゃんが玄関へ戻ってきました。

「今のがばとる!だよ。武器を持ち出しての戦闘だから、レベルが高くても貧乏だと勝てないのさ。」
半裸さんが苦笑しながら恥ずかしそうに頭を掻きながらリビングへ入ってきます。
「負けると分かり切っていながら戦う理由だけど、ボクは星人の争奪戦に興味がなくて、チケット集めのために参戦してるの。」
半裸さんは玄関のポストから回収してきたチケットをディーナちゃんへ手渡しました。
「集めると、勝負ガチャに呼ばれる福引きにチャレンジできるの。」
「その福引きのために、あんな事をしているのか?」
「レア設定だけど、強い武器や防具をもらえる事もあるってね。ボクにとっては高級品を手にする唯一のチャンスなのさ。」
ディーナちゃんは怪訝そうにチケットを見詰めていると、半裸さんがその頭を優しく撫でてきました。
頭を上げて半裸さんの顔へ目を向けると、先程の苦笑と打って変わって、すごく嬉しそうな笑顔となっています。
「な、なんだよ。」
ディーナちゃんが後ろへ半歩退きながら声を荒げます。
「ディーナちゃんが心配してくれて嬉しいな、と思ってね。」
「心配なんかしてない。」
ディーナちゃんは顔を赤らめながら、更に半歩さがって半裸さんの手を振り払います。
「照れるディーナちゃんが可愛いよ。」
半裸さんがハート型のオーラでも飛び出しそうな眼差しを飛ばすと、ディーナちゃんは背を向けて聞こえていない振りをします。
照れてムスッとしている顔を覗き込もうとする半裸さん、その視線から逃げるディーナちゃん。
そんな事を繰り返していると、ワリトちゃんが半裸さんの顔面に飛び付いてきました。

「えっと、ワリトちゃんがご要望なので、バトフレさんの所を巡ってくるから、少し待っていてね。」
半裸さんはそういうとワリトちゃんを顔面に貼り付けたまま玄関へ向かっていきます。
「バトフレさんは星人を賭けずにチケット目的でばとる!をやりあう友達のことね。」
「言わなくても、何となく想像できたよ。」
半裸さんが丁寧な説明に対して、ディーナちゃんがぶっきらぼうに答えます。
それもまた可愛い、と言いたげな視線を残して、半裸さんは再びばとる!の対戦へ向かっていきました。

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[小説:P★RS 半裸さん日記] part142013年01月14日 21時36分29秒

第一話がこちらになります。
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「ところでよ。バトルって何だ?]
ディーナちゃんに問われると、半裸さんは少し困った表情を浮かべました。
「ボトルじゃ弱いのに、とか何とか言われていただろ?」
半裸さんが返答に困っていると、ディーナちゃんが追い打ちを掛けるように言葉を続けました。
「格好悪いから、できるだけ教えたくなかったのに残念だよ。」
半裸さんは呟きながら肩を落として、寂しげに溜め息を漏らしました。
「ばとる!はバウンティハンター同士の決闘でね。仕掛けた側の装備を除いて、リスクの発生しない特殊なフィールドで行われるの。」
半裸さんは説明しながらディーナちゃんを玄関の脇に置かれた戸棚へ連れて行きます。

戸棚を開けると小人の詰められたカプセルがズラリと並んでいました。
「この子達がぷちっと星人さんで、守り神みたいな感じかな?」
半裸さんが紹介すると、ぷちっと星人さん達は各々にディーナちゃんへ挨拶をします。
元気よく手を挙げる者も居れば、眠そうに見詰める者、壁に貼り付いて息を荒げる者など様々な反応を見せました。
「ぷちっと星人の争奪戦が起きた際に、訓練も兼ねた決闘の場が設けられるに至ったの。それが『ばとる!』のシステムなんだ。」
「その決闘だと、お前さんは弱いと?」
「さっきも言ったけど、基本的にノーリスクだから、武器を持ち出しての戦闘になるからね。貧乏で装備がないから勝てないのさ。」
ばつが悪そうな笑顔を見せながら玄関へと戻っていきます。

半裸さんが玄関の前へ戻ってくると、朝食を食べ終えたワリトちゃんが駆け寄ってきました。
「ワリトちゃんも食べ終わった事だし、折角だからディーナちゃんにボクの敗れ様を見せてあげようかな。」
半裸さんが言うと、ワリトちゃんが両手の拳を突き上げてやる気を示します。
「ということで、ちょっとバトって来るから見物しておくれよ。」
そう良いながら手招きでディーナちゃんを呼び寄せます。

ディーナちゃんはガードマザー君の案内でリビングへ戻り、壁へ埋め込まれたディスプレイの前に立ちました。
「ほんじゃ、行ってくるよ。」
背にした玄関から半裸さんが大きな声で声を掛けてきます。
ディーナちゃんはその言葉に対して、肩越しに軽く手を振って応えます。
その直後に画面が点灯して、半裸さんとワリトちゃんが見知らぬぷちロクちゃんと対峙している場面が映し出されます。
対戦相手は剣士の髪にネコリボンを結び、ワンピースのアウター青を装備しています。
お供のペットはメカプリンちゃんを連れてきていました。

「フミさん、今日もばとる!をお願いしますね。」
「こちらこそ宜しくお願いします。」
半裸さんが身構えながら声を掛けたのに対して、相手方のフミさんはリラックスした雰囲気で挨拶を返してきました。
その短い会話が終わると同時に、バトル開始の合図が高らかと鳴り響きました。

半裸さんが合図の鳴り止んだ瞬間に走り出して脇へ回り込むと、すかさずポケットアーミーを撃ち込みますす。
銃撃がフミさんにヒットした直後、ワリトちゃんが正面から腹部を殴り付けます。
フミさんの体勢が整うよりも早く、半裸さんがデッドサイズへ持ち替えて追撃を繰り出すと、折り返してきたワリトちゃんが再び腹部へ一撃を食らわせます。
更なる連続攻撃を繰り出そうと振り返ってみれば、フミさんはワリトちゃんの攻撃を利用して後ろへ飛び退いていました。
「今日は随分と気合いが入ってますね。でも、負けませんよ。」
フミさんは楽しそうに呟きながら、身の丈を超える大砲ロックキャノンを構えます。
「あ、あっちゃ~」
絶望に満ちた呟きを掻き消すように撃ち出された光の砲弾が、半裸さんの姿を輝きの中へ沈めていきました。

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[小説:P★RS 半裸さん日記] part132012年12月24日 18時39分19秒

第一話がこちらになります。
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半裸さんはネコミミ少女さんが冷静さを取り戻すより前に、体を縦に捻ってオーバーヘッドキックを繰り出します。
その蹴りはネコミミ少女さんのお尻を捉えて、着地点を大きく逸らしました。
元より迎撃するつもりで繰り出された蹴りでなかった事もあり、冷静さを取り戻したネコミミ少女さんは綺麗に着地を決めます。
着地点はディーナちゃんの居る場所から3mほど離れた部屋の隅でした。

「レディのヒップを蹴るなんて酷いにゃ。でも、優しいタッチも悪くなにゃい。」
ネコミミ少女さんは舌なめずりと共に呟いて、にやけた笑顔を浮かべながら振り返ると、目の前に半裸さんの顔がありました。
半裸さんが気配さえ感じさせずに詰め寄っていた事もあり、ネコミミ少女さんは小さな悲鳴を上げながら後退ります。
しかし、着地点が部屋の隅だった事もあり、冷たい壁に背中を押し付けるだけに終わります。
「ディーナちゃんはまだお迎えしたなので、過激なスキンシップは遠慮して下さいな。」
半裸さんの普段と変わらない笑顔が逆に恐怖心を煽ったらしく、ネコミミ少女さんがにやけ顔を引きつらせながら頷きました。
「分かってもらえて嬉しいよ。やっほい!」
半裸さんが軽くジャンプしながら両手を天井へ振り上げて叫ぶと、ネコミミ少女さんもつられて同じアクションを取りました。
着地すると同時に固い握手を交わします。
「半裸さんはばとる!とか弱い方なのに、唐突に強くにゃる時があるから恐ろしいにゃ。」
ネコミミ少女さんが苦笑しながら呟きます。
「ボクは弱いからね。家族と友達を守るので精一杯で、ばとる!に力を入れる余裕がないのだよ。」
半裸さんはそういって少しだけ悲しそうに笑うのでした。

半裸さんは本来の目的である磨きを行ってから、ディーナちゃんの所へ戻ってきました。
「お待たせ、ディーナちゃん。磨きも終わったから帰ろうか。」
半裸さんがディーナちゃんの手を取って歩き出そうとした時、ネコミミ少女さんが「またにゃ」と見送ってくれます。
ディーナちゃんが声のした瞬間にビクッと手を強く握ってきたので、半裸さんは声を漏らして笑いながら裏口を通過しました。

ディーナちゃんは部屋へ戻ってくると同時に恥ずかしくなった様子で、乱暴に半裸さんの手を振り払うとそっぽを向いてしまいます。
その態度がまた可愛らしくて、半裸さんが微笑ましく眺めていると、裏口から先程のネコミミ少女さんが飛び込んできました。
「お返しにきたにゃ!」
ネコミミ少女さんが高らかに宣言した声を聞いた瞬間、ディーナちゃんが半裸さんの後ろへ隠れます。
「にゃはは、怖がられてるにゃ・・・」
「当然の結果だと思いますよ。」
先程に押し倒されていたピンクメイドのドールちゃんも入ってきて、呆れた様子でネコミミ少女さんを窘めました。
「反省にゃ~」
ネコミミ少女さんは肩を落ちしながら、ゆっくりと半裸さんの所へ近付いてきて、残り3歩の距離で立ち止まります。
「先程は失礼しました。ちゃんと反省しているようなので、ご勘弁下さい。」
ピンクメイドのドールちゃんが一歩前へ出て深々と頭を下げると、半裸さんがディーナちゃんを前へ出るよう促します。

ディーナちゃんが警戒しながらも一歩前へ出ると、ネコミミ少女さんがすがるような目で見上げてきます。
その表情を見下ろしながら、ポリポリと頬を書きながら困ったような表情を浮かべます。
「ほんとにゴメンにゃ~。今度から気を付けるから仲良くしてほしいにゃ。」
「そう言いながら、にじり寄ると逆効果です。ほら、動かない!」
ディーナちゃんはドールにペシペシと叩かれてながら謝っているネコミミ少女さんの姿に思わず笑ってしまいまう。
それも声を上げて、腹を抱えて、笑いました。
「ああ、もう良いよ。怖がっていたのが馬鹿らしくなった。」
ディーナちゃんが目の端から溢れた涙を払いながら声を掛けると、ネコミミ少女さんの表情が一気に明るくなります。
「ありがとにゃ~。許してもらえなかったら、ドールちゃんが出て行くって脅されていたのにゃ~」
「余計な事は言わなくて宜しい。」
最後のもう一度だけ叩かれてから磨きを済ませて、ネコミミ少女さん達は帰って行きました。
「なんつ~か、嵐が過ぎ去ったようだな。」
2人を見送った後、ディーナちゃんが静かに呟きました。

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[小説:P★RS 半裸さん日記] part122012年12月16日 20時31分16秒

第一話がこちらになります。
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半裸さんが投げ付けられた皿を返しに行きますが、ワリトちゃんは随分とご立腹の様子で受け取ろうとしません。
ディーナちゃんは半裸さんが頭を撫でたり抱き締めたりと、ワリトちゃんのご機嫌取りに奮闘する様子をぼんやりと眺めています。
半裸さんにはワリトちゃんが拗ねている理由が分からないようで、時折に殴られたりと悪戦苦闘しています。
そんな様子を傍観しながら何をやっているのかと呆れつつも、見ていて飽きないと微笑ましくも感じ始めていました。
「オレは早くも毒され始めているのかな。」
ディーナちゃんは今のドタバタを楽しいと感じ始めている事を自覚して、苦笑と共に言葉を漏らしました。

10分ほど奮闘した結果、半裸さんは無事にワリトちゃんのご機嫌取りに成功して、玄関へ戻ってきました。
ディーナちゃんは疲れた様子で頭を垂れたまま歩いてくる半裸さんへ声を掛けようか迷いました。
迷った末に口を開こうとした時、半裸さんが大きく息を吸いながら体を起こして、ゆっくりと天井を見上げていきます。
大きく腕を広げながら限界まで吸い込んだ息を一気に吐き出すと、普段通りの笑顔を輝かせる半裸さんに戻っていました。
「よし、お疲れモードは終わり!」
先程までの疲れた様子が演技でないかと疑いたくなる回復力に、ディーナちゃんは呆れ顔を向ける事しかできませんでした。

「それじゃ、次の磨きに行ってみようか。」
そういってパネルを操作し始めます。
ディーナちゃんはその様子を眺めながら、何とも言えない嫌な予感がしていました。
そんな不安を伝えようと顔を上げた時は既に手遅れで、玄関は別の家と繋がるワープホールとなっていました。
また着替え中ではないかと身構えますが、見た所は不在らしくて住人の姿が見当たりません。
安堵の溜め息を漏らしながら、半裸さんに引かれるままワープへ飛び込んで行きました。

裏口から室内へ入ると、半裸さんが小首を傾げました。
「どうした?」
ディーナちゃんが見上げながら問い掛けると、半裸さんが困ったような表情で見返してきました。
「不在の時に出てくるはずのマネキンがないから、もしかして故障かも・・・」
そう答えた直後、半裸さんの背筋を凍らせる警戒信号が電流のように駈け巡ります。
本能の赴くまま、ディーナちゃんを左へ移動させつつ、嫌な予感のした右の方へ振り返りました。
そこで目にした光景は、床へ寝転ばされたピンクメイドのドールと、押し倒したまま覆い被さっているネコミミ少女のぷちロクちゃんの姿でした。
ピンクメイドのドールちゃんは呆然としたまま見詰めてくるのに対して、ネコミミ少女さんは目を輝かせながら舌なめずりをしています。
「半裸さんが~、ドールを連れてきた~♪」
そう叫ぶと同時に、ネコミミ少女さんが四つん這いから一気に飛び上がります。
天井を這うような高度を維持したまま、半裸さんを飛び越えてディーナちゃんへ突撃していきます。

ディーナちゃんは身の危険を感じながらも、状況が飲み込めずに硬直しています。
ネコミミ少女さんはその様子を空中から見詰めつつ、両手は気の逸りから空気を揉み始めています。
「ちょっとペロペロさせてにゃ~」
ネコミミ少女さんがそう言葉を漏らした瞬間に、半裸さんが床を踏み鳴らしながら飛び上がります。
音に反応したネコミミ少女さんが視線を床へ向けましたが、半裸さんを見付ける事ができません。
半裸さんはネコミミ少女さんが首を曲げて足下を見ない限り見えない死角へ入り込んでいたからです。

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[小説:P★RS 半裸さん日記] part112012年12月02日 20時15分41秒

第一話がこちらになります。
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半裸さんはひとしきり悔しがってから、やおら立ち上がるとパネルを操作し始めます。
「よし、次へ行こうか。次へ!」
開き直ったような口調で言葉を零しながら、口先を尖らせていていました。
ディーナちゃんはそんな様子に気付いて、次も失敗して悔しがる姿を見たいと思ってしまいました。

ディーナちゃんは玄関が他の家の裏口と繋がる瞬間の音に聞き慣れきて、自然と正面を向くようになっていました。
別の家と繋がった扉の向こうを見てみると、部屋の中央でナイトのアウターを着込んだ凛々しいぷちロクちゃんが周囲を警戒していました。
誰もいない事を確信した様子で、おもむろにメイドのアウターを取り出すと、そそくさと着替え始めます。
ディーナちゃんが顔を赤らめながら、嫌な予感がして半裸さんを見上げると、先程の悔しそうな色が消え失せてニヤリと笑っています。
「このような状況を役得と呼ぶのさ!」
半裸さんが嬉々とした表情で部屋へ飛び込もうとします。
「これはさすがにアウトだろ。せめて行くならオレを置いていけ!」
ディーナちゃんが慌てて叫びながら、勢い付く半裸さんを引き留めるようと引っ張りましたが、手応えが全くありません。
大きく後ろへ倒れ込みそうになって、反射的に重心を前へ戻した瞬間、タイミングを見計らった半裸さんが引っ張り上げてきます。
後ろへ倒れそうだった体は一転して、前へ放り出されるように浮き上がり、抵抗する暇も与えられずに裏口から突入していました。

ディーナちゃんは不本意ながらも、入ってしまったからには仕方ないと気配を殺します。
それでも不満を隠すつもりもなく半裸さんを睨み付けますが、わざとらしい気付かない振りを押し通されました。
ここで駄々を捏ねてもナイトのぷちロクちゃんに見付かって叱られるだけと諦めて、早く退散させる方向へ頭を切り換えます。
改めて視線を正面へ向けると、先程のナイトなぷちロクちゃんが可愛らしいメイドのアウターへ着替え終わって、鏡を前にポーズを取っていました。
凛々しい第一印象からのギャップも相まって、頬を赤らめながらポーズを取っている様子はとても可愛らしく見えました。

半裸さんは見取れているディーナちゃんを促して、鏡に映らない角度から近付いていきます。
射程圏内まで近付いてから立ち止まると、ディーナちゃんが隠れるように背中へ寄り添ってきました。
背中の感触にうっとりしながら、ポーズを決めて楽しむぷちロクちゃんのアウターへ手を伸ばして、絶妙なタッチで磨いていきます。
星の数ほどアウターを磨いてきた半裸さんは邪念が混じっていてもミスをしません。
磨き終えた事をディーナちゃんへ合図すると、二人で足音を消して飛び出します。
裏口へ飛び込んだ直後に振り返ると、磨き完了を知らせるメッセージが流れていました。
それを目にしたぷちロクちゃんは耳まで赤く染めながら、顔を両手で覆いながら鏡の前で座り込んでいきます。

ディーナちゃんが罪悪感を覚えているのに対して、半裸さんは眼福だったと楽しそうに笑っています。
ディーナちゃんが呆れながら見上げていると、パン皿が飛んできて半裸さんの後頭部に直撃しました。
パン皿は意外と頑丈らしく「ゴンッ」と軽快な音を立てながら割れずに、回転しながら落下していきます。
きりもみしながら落下する皿は早々にダメージから復帰した半裸さんによって受け止められていました。
「ワリトちゃん、お皿を投げるのは危ないから止めようね。」
ディーナちゃんが半裸さんの言葉に皿を投げ付けた犯人を察して振り返ると、ワリトちゃんが拗ねた表情で見ていました。

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http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2012/12/16/6661847

[小説:P★RS 半裸さん日記] part102012年11月25日 17時39分22秒

第一話がこちらになります。
http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2012/09/17/6576628
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「さて、サクッと次の磨きへ行こうか。」
半裸さんがワリトちゃんを移動させ終わってから、意気揚々と玄関へ戻ってきます。
「まだ行くのか。」
ディーナちゃんが疲れた顔をしながらも差し出された手を素直に握り返しました。
半裸さんは拒むだけ労力の無駄と悟っての行動と知ってか知らずか上機嫌です。
「全部で200件だよ。そして、まだ1件しか終わってない。」
半裸さんが嬉しそうな笑顔で腕を突き出してくるのに対して、ディーナちゃんは頬を引きつらせて笑う事しかできませんでした。

「では、張り切って2件目へ行こうか。」
半裸さんがパネルを操作すると、先程と同様に玄関が別宅の裏口へと繋がります。
先程と異なる部屋である事は一目瞭然、ちゃぶ台が置かれ和室の中央に1人、ぷちロクちゃんがテレビを見ながら寝転がっています。
容姿は黄色いツインテールに黄色いアウターを着込んでいて、背中を向けているので表情は分かりません。
ディーナちゃんが在宅中の磨きに戸惑いを感じるよりも早く、半裸さんが手を引いて飛び込んでいきます。
驚きの声を噛み殺して、降り立った床が足音の立たない畳だった事にホッと安堵の溜め息を吐きました。

ディーナちゃんがそっと顔を上げると、半裸さんが顔を覗き込んできて、視線で「準備OK?」と聞いてきます。
その合図に頷いて応えてから、テレビを見ながら時折に震える背中へゆっくりと近付いて行きます。
半裸さんは手が届く位置まで近付くと、しゃがみ込んでクリームを手に取り、アウターの痛んでいる箇所を探して擦り込んでいきます。
擦り込むと言っても押し付けて擦るわけでなく、触れるかどうかの微妙な手加減でクリームを塗っていきます。
半裸さんは磨き終わると同時に急ぎ足で部屋へ戻っていきます。
ディーナちゃんが気になって後ろを振り返えると、黄色のぷちロクちゃんがテレビに背を向けて、半裸さん達を見送っていました。
ディーナちゃんと目があった瞬間、黄色のぷちロクちゃんはニヒルな笑顔を向けてながら、グッドサインを送ってきました。
そのサインへ対して小さく会釈を返している間に、裏口を通り抜けて自宅へと戻ってきていました。

半裸さんは部屋へ戻ると同時に振り返り、ニヒルな笑顔を向けるぷちロクちゃんを確認すると、悔しそうな呻き声を上げました。
「黄色の妖精さんだけは気付かれずに磨けた事が1度もないの。今回も気付かれたか、悔しいな。」
ディーナちゃんには悔しそうに俯きながらもしっかりとグッドサインへ応えている半裸さんの姿がとても楽しそうに見えました。
悔しがっているのに楽しそうと、相反する言葉が繋がっていて矛盾している気もしました。
言葉を正そうと考えても同じ結論へ辿り着いてしまい、悔しさも含めて心の底から楽しんでいるからだと、納得するしかありませんでした。

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http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2012/12/02/6649874

[小説:P★RS 半裸さん日記] part92012年11月18日 18時18分35秒

第一話がこちらになります。
http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2012/09/17/6576628
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半裸さん達が自室へ戻ってくると、ワリトちゃんがテーブルへ背を向けた姿勢でフレンチトーストを食べていました。
そのワリトちゃんの正面にはパン皿を掲げたマザー君が立っていて、食べこぼしを受け止めようと待機しています。
「ワリトちゃん。お出迎えは嬉しいけど、ちゃんと前を向いて食べないと行儀悪いよ。」
半裸さんの言葉に対して、ワリトちゃんが首を左右に振って応えます。
マザー君も同じ事を言って拒否されたらしく、困った様子で半裸さんを見詰めてきました。
「もう、たまにわがままになっちゃうのは何故なのかしら。」
半裸さんはそう呟きながら握っていたディーナちゃんの手を離し、ワリトちゃんの方へと歩み寄っていきます。

ディーナちゃんは取り残される格好となって、呆然としながら壁へ寄り掛かりました。
「今のって不法侵入じゃないのか?」
他人の家へ勝手に踏み込む行為を言い表そうとした時、犯罪行為を指す単語しか思い浮かびません。
ディーナちゃんは無理矢理に家族の一員へ加えられた直後、犯罪行為としか思えない行為へ付き合わされて混乱していました。
「フレンド登録している人は基本的に出入り自由になるのさ。そういう関係を同意しているから違法性はないよ。」
半裸さんがディーナちゃんの疑問へ答えながら、ワリトちゃんの座っている椅子を持ち上げて、テーブルの反対側へ運んでいきます。
ワリトちゃんはどうやら椅子から降りたくなかっただけらしく、椅子と一緒に大人しく運ばれていきます。
ディーナちゃんは説明を受けても今一つ納得できていない表情を浮かべながら、ワリトちゃんの運搬される様子を見詰めていました。

ワリトちゃんが玄関を見ながら食事のできる位置へ移された直後、半裸さん達の背後で勝手口が現れてました。
同時に半裸さんのマネキンも出現したのですが、本人が着ていない赤い上着を羽織っていました。
ディーナちゃんが疑問を口にするよりも前に、橙色の浴衣を羽織ったぷちロクちゃんが勝手口から飛び込んできました。
浴衣のぷちロクちゃんはディーナちゃんと目が合うと、軽く手を振ってからマネキンの上着を磨いて帰って行きました。
ディーナちゃんが呆気にとられていると、船内ディスプレイに『ユーナさんが「B★RSのアウター赤」を磨いてくれました!』とメッセージが流れました。
「おや、ちょうど誰か来ていたみたいだね。ボク等と同じようにスッと来て、サッと磨いて、パッと帰って行ったでしょ?」
半裸さんはディーナちゃんの表情から、磨きの一部始終を目撃したと察した上で質問を投げ掛けます。
ディーナちゃんは唖然としたまま静かに頷いてから、磨きが犯罪でないと納得して、溜め息を吐きながら床へ座り込みました。

「そういえば、マネキンは上着を着ていたのは何故なんだ?」
「ボクがアウターを着ない主義だから、代わりにマネキンが着ているのさ。磨くアウターが無かった困るでしょ?」
「アウターを着ない主義を貫いている事の方が困りものだと思うけどな。まさか、その主義も一般的とか言わないよな?」
ディーナちゃんが眉をひそめて、心底に嫌そうな表情を浮かべながら聞いてきます。
「まさか。ボクの半裸は個性さ。ステータスと呼んでも良いよ。」
半裸さんが嬉しそうに拳を突き出しながら力説する姿に、ディーナちゃんは小さく溜め息を漏らしました。
「犯罪者じゃないだけで、変なヤツの家族になった事に変わり無しか。」

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[小説:P★RS 半裸さん日記] part82012年11月04日 19時44分16秒

第一話がこちらになります。
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「さて、ディーナちゃんの家族入りも決まった事だし、平常業務へ戻ってフレンドを磨きに行こうか。」
半裸さんはそう良いながら足を開いて、股の隙間からワリトちゃんを座面へ降ろすと、後ろへ下がって椅子から腰を外しました。
首を後ろへ反らして見上げてくるワリトちゃんの頭を撫でながら、黙々と調理中のマザー君を指さします。
「ワリトちゃんは昼食を済ませてからね。マザー君がフレンチトーストを作ってくれているから待っててね。」
ワリトちゃんはクンクンと華を鳴らして甘い香りを嗅ぎ付けると、足を前後へ待ち遠しそうに揺らし始めました。

半裸さんは愛くるしい待ち体勢に入ったワリトちゃんの頭をもう一度撫でてから、ディーナちゃんの方へ目を向けます。
「折角だし、ディーナちゃんも来るかい?」
「磨きって何をしに行くのさ?」
ディーナちゃんがふて腐れた顔で視線を在らぬ方向へ向けながら呟きます。
「このクリームを使って、フレンドさんの防具を磨いてあげるの。そうすると耐久力が少しだけ回復して、喜んでもらえるのさ。」
ディーナちゃんは半裸さんが自慢げに取り出した容器へ冷ややかな視線を向けます。
「それ、自分で使えばいいじゃないか。他人のために使う意味が分からない。」
「使いたくても使えないのさ。これは何種類も重ね塗りしないと効果が出ないの。そんで、ボクの細胞を材料に合成されているから、自分へ使っても同種扱いになって意味がないんだよ。」
半裸さんはクリームを自分の肌へ塗り付けると、直後に固まって剥がれ落ちて行きます。
「つまり、そのクリームは半裸ウィルスが主成分のコーティング剤なのか。なんだか、防御力は下がりそうで嫌だな。」
「人を病原菌みたいに言わないでおくれよ。ボクの半裸は個性、ポリシーだよ。人に強要するような事はしないさ。」
半裸さんは酷い言われように、頬を掻きながら苦笑しました。

「ディーナちゃんは色々と忘れているようだし、見物ついでに付いておいでよ。」
半裸さんはそう言ってディーナちゃんの手を取り、やや強引に玄関まで引っ張って行きました。
「難しい事は何もないから、パッと行って、サッと磨いて、スッと帰ってくるだけさ。ほんじゃ、行くよ。」
ディーナちゃんの返事を待たず、手早く玄関のパネルを操作すると、ドアに映像が映し出されました。
「これ、映像じゃないからね。飛び込めば、そこはもうフレンドのお部屋だよ。」
そう教えると同時にディーナちゃんの手を引いたまま、ドアの映像へ向かって足を踏み入れていきます。

ディーナちゃんが驚きの声を漏らす中、水でできた厚さ10cmの壁を通り抜ける感触の後、目を開ければ見知らぬ部屋へ立っていました。
後ろを振り替えってみれば、先程とは逆で裏口があるだろう壁にフレンチトーストを受け取るワリトちゃんの様子が映っています。
「誰も、居ないのか?」
ディーナちゃんは周囲を見回してから、小声で半裸さんに声を掛けました。
「そうみたいだね。とりあえず、磨きをやって帰ろうか。」
半裸さんがそう言って指さした先に、傷だらけのアウターの着せられたマネキンが置かれていました。
「このマネキンはこの部屋の人とそっくりなんだよ。」
そう言いながらクリームを手に取って、アウターの傷へ擦り込むように磨くと「キュッキュッ」と音が鳴りました。
「これで終わり。さ、戻るよ。」
ディーナちゃんの手を取って、再び有無も言わさずにドアの映像へ飛び込んで、自宅へ戻ってきました。

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