[小説:闇に舞う者] part202011年03月06日 20時32分06秒

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乱暴に撫で回した事で乱れたチェルニーの髪を整えてやりながらも、ルワンは次なる目的となる小屋を見つていた。
「選択の余地が無くなった事だし、行くとするか。」
ルワンの苦笑が混じった呟きを聞くと同時に、チェルニーは体勢を変えてしっかりと抱きついてきた。
事細かに指示を飛ばさなくても行動を起こす機転の良さに感心しながら、椅子から降りる要領で腰掛けていた枝から飛び降りた。
自然落下による加速が始まるより前に、鎖鎌で宙吊りの格好になると、今度は鎖をゆっくりと伸ばしながら降下していく。
枝から飛び降りた際に悲鳴の一つでも上げるかと思いきや、降下の体勢が安定すると体を離して眼下の光景を笑顔で楽しむほどの余裕まで見せていた。
チェルニーが垣間見せる度胸や好奇心の強さといった素養は、隠れ里という閉鎖的な世界で見ず知らずの恐怖と教え込まれて育てられた子供とは思えなかった。
小さな疑念の種となる少女は、今もなお自分の腕の中で笑顔を覗かせている。

地面へ降りると、胸に抱いていたチェルニーを後ろへ背負うと、鎖鎌の鎖で軽く縛り付ける。
2度ほどジャンプをしたり、上体を左右へ揺すったりしてから、後ろを振り返る素振りを示すと肩越しに「大丈夫だよ」と返事が返ってきた。
ディーナは定位置である後頭部をチェルニーに占有されているため、チョッキの胸元に滑り込んでいた。
各々の準備が整ったところで、ルワンは4回ほど深呼吸をしてから10cmほど軽く飛び上がり、着地するのと同時に走り出した。
村と外界を仕切っている柵が近付いてくるに連れて、チェルニーが緊張しているのか体を強張らせたが、走りの勢いを殺さずに境界を跳び越えた。
村へ侵入してからもルワンはスピードは衰えることはなく、木の上から確認した警戒網の隙間を擦り抜けて目的の小屋まで一気に走り抜けていく。
予想していた通り、村を襲ったモンスターは低レベルで警戒網も粗くて、あっさりと目的の小屋の前へ辿り着いていた。

小屋の扉は施錠されていたが、何の小細工もない鉄の鍵だった事もあり、鎌の一薙ぎで簡単に切り落とせた。
音を立てないよう慎重に扉を開けて内部を覗き込むと、ディーナが偵察した時と全く変わらず、部屋の隅に1人の少女が座っていた。
背中の中程まで伸びたエメラルドグリーンの髪をポニーテールに結っており、服装を白地に黄色と赤の刺繍が施された神官服を着込んでいた。
扉に小さく開いている事へ気付く事もなく、ペンダントが放つ淡い光を頼りに読書へ耽っていた。
ルワンは静かに室内へと侵入して扉を閉めて、背負っていたチェルニーを床へ降ろしてもなお、少女は彼等の登場に気が付かなかった。
「ティティス・リアムレイドだな?」
ルワンが声を掛けると、少女は突然の来訪者に驚いた様子もなく、ゆっくりと視線を向けてきた。
「ええ、そうよ。」
ティティスは目が光に慣れていた影響で来訪者の姿が良く見えていないらしく、目を細めながら短く返事を返してきた。
「燃えるような赤い髪、若い顔立ちに不釣り合いな鋭い瞳、服は長袖のシャツにチョッキ、ズボンまで黒ずくめ。」
徐々に暗闇へ目が慣れてくると、確認できたルワンの容姿を1つずつ口に出して確認していくと、途中で何かに思い当たった様子で目を見開くと、声色が上擦り始めた。
「貴方様はもしや、ルワン・F・ダウロス様ではあられませぬか?」
「今更に取り繕っても遅い。それに言葉遣いが狂っているぞ。」
呆れて肩を竦めながら、手にした武器の変形を解いて、鎖鎌から元の九龍棍へ戻してみせた。
「これで、お前が聞いている装備と合致するんじゃないか?」
ルワンが改めて問うと、ティティスは首を上下に振りながら軽く放心状態となっていた。

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連載も 何だかんだで 20回2011年03月06日 20時48分32秒

今日も昨日と同じような天候で朝の冷え込みが厳しかったらしいが、例によって日差しの温もりが感じられる時間まで眠っていたので、寒かったかどうか良く分かっていない。
起床時刻を意識していなければ、昼過ぎまで眠っていた可能性も十分にあるのだが、今週も小説の下書きが殆どなかった事もあって遅くまで寝ていられないため朝9時に起床した。

今週分で連載20回となるため、主要キャラクターを全て登場させたいと考えていた事もあり、少しばかり気合いを入れて取り掛かろうと思っていたのに、予定した通りに事が運ぶほど人生は甘くなくて焦りさえ感じていた。
平日にネタ不足で苦しんでいる状況では、小説の下書きを進められなくても仕方がないとしても、土曜まで執筆に勤しんでいる暇がなかった影響が意外と大きい。
病院での3時間という膨大な待ち時間は、Toda氏との昼食を前倒しにするなどして潰した上に、病院へ戻ってから10分足らずで診察室へ呼ばれたため、小説の方に意識を向けているだけの余裕は全くなかった。

下書きをしていないまでも書く内容だけは絞ってあった事がせめてもの救いだったが、連載20回でメインとなる登場人物を舞台へ上げたいという野望を入れると、バランスが取れなくて何度も手が止まってしまった。
絶対に守らなければならない目標でもなかったけれど、連載20回の割にストーリーの進みが遅い事が気になっており、せめて登場人物だけでも出揃わせたいとの悪足掻きのような感情に駆り立てられていた。
結果的に予定より連載する文章が長くなってしまったけれど、とりあえずは最後のメインキャラクターが舞台へ上がってくれたので、完全なる自己満足だけど安堵している。

この先に物語が加速してくれるか否かは未知数だけど、継続する力だけは失わないよう頑張りながら進めていけたらと思う。

珍しく後書きっぽい記事を書いている理由は今日一日の殆どを小説に費やしていた事もあって、本気でネタ切れ状態だったという事実を秘密にしておきたい今日この頃だ。