[小説:闇に舞う者] part342011年06月19日 21時04分22秒

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ルワンが唐突に武器を失ってバランスを崩しそうになった石像の腕を駆け上がり、その脳天にバルディッシュを振り下ろす。
バルディッシュの刃は石で作られたゴーレムの頭に軽々と食い込み、脳天から股下まで一気に両断して1本の赤い線を刻み込んだ。
ゴーレムを両断する切れ目から闘気の赤い輝きが溢れ出し、傷口からひび割れが広がるように全身を埋め尽くしていく。
息を呑む間もないほどの時間で闘気が全身へ広がり、瞬く間に大きなゴーレムの全身を消滅させていく。
バルディッシュを振り切って着地した直後のルワンの背中を狙って、残るもう1体のゴーレムが剣を振り下ろしてくる。
ルワンは振り返りながら立ち上がり、全身を使って横へ旋回させた軌道を急上昇させ、闘気の輝きが消えた刃で真下から迎え撃った。
激しい衝突音を響いて火花が散る中で、ゴーレムの両手が天に向かって跳ね上げられた。
再び繰り広げられる質量を無視した力比べの勝敗はルワンの圧勝となり、ゴーレムは打ち上げられた剣を離すまいと踏ん張った。
ルワンがその隙を見逃すはずもなく、ゴーレムが踏み留まった時は既に足下まで踏み込んでいた。
バルディッシュの刃には失われていた闘気の光が戻っており、その輝きは前より濃密になり威圧感が増していた。
輝きの残像を残しながら振り上げられたバルディッシュの刃は、ゴーレムの股下に食い込むと同時に赤い閃光を走らせた。
闘気が1体目の時より何倍もの早さで浸食したため、閃光のように見えたのだと理解刺せる間もなく、ゴーレムは焼き払われていた。

2体のゴーレムをあっさりと倒してみせたルワンの背中を見つめ、呆然とするチェルニーの頭にティティスの手が置かれた。
「ルワンが言ってるわよ。俺は強いから安心しろってね。」
ティティスを見上げる先に自慢げな笑みが浮かんでいた。
「最上級の魔導士にして、超一流の戦士でもある。ルワンは伊達で最強と呼ばれている訳ではないのよ。」
強めに頭を撫で回しながら付け加えられた言葉が心強く、そして心地よくも感じられて、チェルニーは自然と笑顔になっていた。
「笑顔を見せる相手を間違えてる。さ、行きましょう。」
ティティスに促されて、跡形も残さず終了した戰場へ佇むルワンの方へと歩き出した。
2人が歩き出したと察すると同時に、ルワンもまた屋敷の方へ進み始めた。
移動速度は女性陣の方が僅かに早くて、徐々に近付く背中に興奮を覚えながらも、新たな急襲を警戒してペースを乱さず歩き続けた。
双方の間の距離を10mほど残したままに、ルワンが先行して玄関の前へ辿り着いて、おもむろに扉へバルディッシュを振り下ろした。
切れ目から迸る赤い輝きは扉だけを綺麗に浸食して焼き払ったため、最初から玄関がなかったと言われたら信じてしまいそうだった。
玄関を焼き払った所で武器の形態を棍へ戻してから振り返り、女性陣の到着を待つ姿勢を見せた。
「武器は戻しちゃうの?」
「建物の中でバルディッシュを振り回したら、敵の前に屋敷が倒壊しちまうよ。」
玄関前の階段を上りながら聞いてきたチェルニーに対して、ルワンが呆れ顔を向けながら答えた。

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