[小説:闇に舞う者] part13 ― 2011年01月16日 17時51分21秒
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http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2010/09/20/5357805
虹色に輝く鏡の中へ足を踏み入れると、様々な動物達が両脇を固める色のない道が敷かれていた。
1歩毎に距離と時間を飛び越えていく感触を確かめながら、歩調を変えずに進んでいくと、通り過ぎた先から動物が形を失っていく。
同じ景色の続く前方だけを見つめながら、立ち止まることも振り返ることもせずに歩んでいくと、道行く者を見守ってきた動物の隊列に終わりが見えてきた。
末端の動物を通り過ぎる瞬間も躊躇することなく足を踏み出し、最後の消失を背で感じた瞬間に、虹色だった世界が割れたステンドグラスのように崩れ落ちた。
そして、放り出された世界は深い森の中であり、一呼吸で分かるほど濃密な魔性の香りに、ルワンは懐かしささえ感じている自分に苦笑しながら、ゆっくりと虚空へ手を伸ばすと愛用の武器を引きずり出した。
ルワンの降り立った地はルディア王国が封じる魔性の森の最深部で、俗に「闇の森」と呼ばれる区画に属していた。
魔性の森は大きな魔導力の吹き溜まりであり、広大な敷地の中に様々な表情を持っており、代表的な区画には名称が付けられていた。
闇の森という呼称もその一つで、名称から日差しも届かない鬱蒼とした森林地帯が連想されがちだが、実際は光にも水にも恵まれた和やかな表情を見せる場所もある。
闇は魔物が潜む場所であると同時に、逃げ惑う者を隠す場所としての役割も担っており、闇の森と呼ばれる区画も陰と陽の二面性を持ち合わせていた。
そして、魔性の森を統べる意思は随分と世話焼き性格の持ち主であり、歪められた空間を穴埋めする際に、何処かの隠れ里を引き抜いて取り込んでは守ろうとした。
そういったお節介の積み重ねにより作り上げられた場所こそが、外で闇の森と呼ばれる区画なのだ。
隠れ里の存在を公言しない事は、闇の森の実態を知る者達にとって、暗黙のルールとなっていた。
しかし、隠れ里の住人は何か特殊な能力を持っている種族が多いのだが、怯える生活から解放され、何世代も重ねている間に凶悪化する者達も少なくない。
更に魔性の森が有する溢れんばかりの魔導力が、悪しき方向へ能力を進化させる場合もある。
穏やかな表情を浮かべる闇の森も、やはり魔性の森の一部らしく先に何があるのか分からない混沌に包まれている。
何が出るのか分からない闇の森で、不安よりも期待の方へ胸を弾ませながら、ルワンは虹色の回廊を歩いた時と変わない調子で歩を進めていった。
今回の件に関しては、マリアーヌの見解が的を射ているのであれば、ティティスはルワンと出会う運命あるはずである。
そして、ルワンもマリアーヌが口にした「運命」という言葉を信用していたので、闇雲に歩を進める事へ何の躊躇も感じなかった。
ルワンは神聖視してくるマリアーヌを煙たがっていた反面、気持ち悪いほどの理解者として信頼もしていた。
次へ
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虹色に輝く鏡の中へ足を踏み入れると、様々な動物達が両脇を固める色のない道が敷かれていた。
1歩毎に距離と時間を飛び越えていく感触を確かめながら、歩調を変えずに進んでいくと、通り過ぎた先から動物が形を失っていく。
同じ景色の続く前方だけを見つめながら、立ち止まることも振り返ることもせずに歩んでいくと、道行く者を見守ってきた動物の隊列に終わりが見えてきた。
末端の動物を通り過ぎる瞬間も躊躇することなく足を踏み出し、最後の消失を背で感じた瞬間に、虹色だった世界が割れたステンドグラスのように崩れ落ちた。
そして、放り出された世界は深い森の中であり、一呼吸で分かるほど濃密な魔性の香りに、ルワンは懐かしささえ感じている自分に苦笑しながら、ゆっくりと虚空へ手を伸ばすと愛用の武器を引きずり出した。
ルワンの降り立った地はルディア王国が封じる魔性の森の最深部で、俗に「闇の森」と呼ばれる区画に属していた。
魔性の森は大きな魔導力の吹き溜まりであり、広大な敷地の中に様々な表情を持っており、代表的な区画には名称が付けられていた。
闇の森という呼称もその一つで、名称から日差しも届かない鬱蒼とした森林地帯が連想されがちだが、実際は光にも水にも恵まれた和やかな表情を見せる場所もある。
闇は魔物が潜む場所であると同時に、逃げ惑う者を隠す場所としての役割も担っており、闇の森と呼ばれる区画も陰と陽の二面性を持ち合わせていた。
そして、魔性の森を統べる意思は随分と世話焼き性格の持ち主であり、歪められた空間を穴埋めする際に、何処かの隠れ里を引き抜いて取り込んでは守ろうとした。
そういったお節介の積み重ねにより作り上げられた場所こそが、外で闇の森と呼ばれる区画なのだ。
隠れ里の存在を公言しない事は、闇の森の実態を知る者達にとって、暗黙のルールとなっていた。
しかし、隠れ里の住人は何か特殊な能力を持っている種族が多いのだが、怯える生活から解放され、何世代も重ねている間に凶悪化する者達も少なくない。
更に魔性の森が有する溢れんばかりの魔導力が、悪しき方向へ能力を進化させる場合もある。
穏やかな表情を浮かべる闇の森も、やはり魔性の森の一部らしく先に何があるのか分からない混沌に包まれている。
何が出るのか分からない闇の森で、不安よりも期待の方へ胸を弾ませながら、ルワンは虹色の回廊を歩いた時と変わない調子で歩を進めていった。
今回の件に関しては、マリアーヌの見解が的を射ているのであれば、ティティスはルワンと出会う運命あるはずである。
そして、ルワンもマリアーヌが口にした「運命」という言葉を信用していたので、闇雲に歩を進める事へ何の躊躇も感じなかった。
ルワンは神聖視してくるマリアーヌを煙たがっていた反面、気持ち悪いほどの理解者として信頼もしていた。
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