手の平で 踊らされてた 一週間 ― 2010年04月24日 21時36分44秒
風邪の方も落ち着いたので昔話の続きを書いていきたいのだが、書きたいことを上手くまとめられるか少し心配していたりする。
予定としては今日の話で中学へ入学した当初のエピソードを終わらせるつもりなのだが、どうなる事やら・・・と不安を感じている今日この頃、少しでも楽しんで頂ければと願うばかりだ。
放課後を知らせるチャイムが鳴り終わっても、すぐに帰宅の準備を始める者が少ない中で、俺だけは中身の殆ど入っていない鞄を手に持つと、そそくさと教室を出て行った。
小学校時代に染み付いた習慣による行動であり、朝から休み時間の度に話しかけてきたクラスメイトが疎ましかった訳ではない。
確かに「一緒に帰ろう」なんて言われるのではないかと少しだけ様子を気にしたけれど、女同士の会話に花を咲かせていたので、声を掛けることもなく教室を出てきた。
今もそうだが、俺は自分が人に好かれるタイプの人間ではないと思っているから、普通に人の輪の中で笑っている彼女を見ていると、あれこそが自然の姿だと強く感じられて、触れてはいけないような気がした。
そんな心境もあって少し背中に物悲しさを背負ってしまった帰り道、校門を出てから100mほど歩いた所で、後ろから何かの叫び声が聞こえてきたので振り返ってみると、大きく手を振る女子生徒の姿が見えた。
何やらドラマのワンシーンを再現してるような光景に気恥ずかしさを憶えて、他人の振りをしようと思ったのに悲しいかな校門を出てから左に進路を取った人間は俺だけだった。
あの時ほどに孤独という状況を恨んだことはなくて、他人の振りはできなくても気恥ずかしい行為に付き合う義理もないと無視して、背を向けたのだけど後ろで笑われているような気がして酷く居心地が悪かった。
そんな騒がしい初日を体験した翌日も、学校へ早く着きすぎる事に何の問題も感じなかった事もあって、母親が呆れるほど早い時間に家を出てきて、誰もいない教室で机に突っ伏していた。
学校までの片道15分ほどの徒歩で火照った体が冷め始めて、眠気が感じられた頃合いに再び勢いよく教室のドアが開く音が聞こえてきた。
体を起こさず顔だけ音のした方へ向けてみると、床に両方の手と膝を付いている女子生徒の姿がそこにあって、その口からは「今日こそは勝ったと思ったのに~」と呪いの言葉を思わせる音が漏れていた。
その後の行動は前日と同じような感じで、違いと言えば自分の椅子を運ばずに左隣の席に堂々と座った事くらいだ。
休み時間ともなれば俺の所へやってきてはよくも話のネタが尽きないものだと呆れるくらいに喋っていた。
他の女子生徒と馴染めていないわけでないのに、何故に俺の所へ来るのか理解に苦しんでいる中で、やはり俺の事を知った上で話し掛けてきているのではないかという可能性が次第に大きくなっていった。
しかし、彼女との会話は殆ど世間話ばかりで素性に触れる内容が殆ど含まれていなくて、最初に話し掛けられてから新たに得られた情報といえば名字くらいだった。
多少の探りを入れてみようかと考えながらも、何か困る事があるわけでもないからと言い訳をしながら、下手な行動によって今の関係が崩れる事を恐れていた。
小学校時代の俺に関する話噂として流れている様子も、時折に見受けられるようになってきたし、数日と待たずに誰も寄り付かなくなると思っていたから、余計に自分から何か行動を起こそうという気にはならなかった。
噂が流れる中での微妙なバランスで続く楽しい学校生活が 7日目の夜に、母親が「そういえば、あの子と初めて同じクラスになったそうなじゃない」と言い出した。
誰のことだか分からずに首を傾げていると、母親が「昔に良く一緒に遊んでいた女の子がいたでしょ。幼馴染みの」と言葉を付け加えてくれて、俺の天敵とも言える男勝りな女の顔が頭に浮かんできた。
しかし、俺に喧嘩の仕方を教わった挙げ句に、その技の標的を常に師匠へ向けてくるような凶暴な女が自分のクラスに居た覚えがなくて、右に傾けた首を左へと捻っていた。
そんな俺の様子を見ていた母親が怪訝そうな顔で「あんた、あの子の名前を言える?」と聞いてきたので、ノリコという天敵の名前を答えると「名字は?」と続けざまに質問を投げ付けられた。
その質問に答えられずにいた俺に対して、母親が溜め息混じりに教えてくれた幼馴染みの名字を聞いて、色々な疑問が一気に解消される事になる。
そう、入学当初から俺に寄ってきていた女子生徒こそが天敵として恐れていた幼馴染みのノリコでだったわけだ。
そうと分かってしまった翌日、いつも通り誰もいない教室にいても机に伏せる気分になれず、礼によって 2番にて現れるだろうクラスメイトを待っていた。
行きよい良く扉を開けるパターンは既に終わっていて、普通に教室へ入ってきたノリコは居眠りの体勢を取っていない俺を見るやいなや「やっと分かったか、こんちくしょうめ」と頬を吊り上げて笑った。
その表情は悪戯に成功した悪ガキを連想させる笑顔で、会話の中で素性を探れなかった事も、違和感を感じながら確信へ近づけなかった事も、全てノリコの策略だったと物語っていた。
ノリコが語ったところによると、俺が彼女に気が付かなかった事への仕返しではなくて、女の子らしくなった証拠として何処まで気付かれないで過ごせるか試していたらしい。
俺は小学 3年を最後にノリコと顔を合わせて会話をしておらず、学校でも同じクラスになった事が 1度もなかったので、子供の頃の印象で完全に止まっていた。
その時代におけるノリコは男勝りの活発過ぎる女の子で、お淑やかになれと注意を受けるようなタイプだった。
色々と心境の変化があって女らしさに目覚めた結果、印象ががらりと変わってしまったために、人の名前と顔を覚えるのが苦手だった俺は全く気付かなかったわけだ。
中学に入学した時点で俺が知っていたノリコは彼女の中で黒歴史扱いだったらしく、幼馴染みの名字を知らないという失礼に対する怒りよりも、自分が大きく変われた事が照明された喜びの方が大きかったらしい。
俺としては掌で踊らされていた状況だったわけで、面白くなかったけれどふてくされる以外に何もできなかった。
ここまでで中学入学からの 1週間のエピソードは終わりで、中休みを挟んで 3日間に渡る連載は一段落だ。
何とか書き終わってホッとしているのだけど、楽しんでもらえたのかどうか少し不安も少しある。
連載を続けろと言われても困るから、コメントを下さいとか言いづらいのが悔しい今日この頃だ。
予定としては今日の話で中学へ入学した当初のエピソードを終わらせるつもりなのだが、どうなる事やら・・・と不安を感じている今日この頃、少しでも楽しんで頂ければと願うばかりだ。
放課後を知らせるチャイムが鳴り終わっても、すぐに帰宅の準備を始める者が少ない中で、俺だけは中身の殆ど入っていない鞄を手に持つと、そそくさと教室を出て行った。
小学校時代に染み付いた習慣による行動であり、朝から休み時間の度に話しかけてきたクラスメイトが疎ましかった訳ではない。
確かに「一緒に帰ろう」なんて言われるのではないかと少しだけ様子を気にしたけれど、女同士の会話に花を咲かせていたので、声を掛けることもなく教室を出てきた。
今もそうだが、俺は自分が人に好かれるタイプの人間ではないと思っているから、普通に人の輪の中で笑っている彼女を見ていると、あれこそが自然の姿だと強く感じられて、触れてはいけないような気がした。
そんな心境もあって少し背中に物悲しさを背負ってしまった帰り道、校門を出てから100mほど歩いた所で、後ろから何かの叫び声が聞こえてきたので振り返ってみると、大きく手を振る女子生徒の姿が見えた。
何やらドラマのワンシーンを再現してるような光景に気恥ずかしさを憶えて、他人の振りをしようと思ったのに悲しいかな校門を出てから左に進路を取った人間は俺だけだった。
あの時ほどに孤独という状況を恨んだことはなくて、他人の振りはできなくても気恥ずかしい行為に付き合う義理もないと無視して、背を向けたのだけど後ろで笑われているような気がして酷く居心地が悪かった。
そんな騒がしい初日を体験した翌日も、学校へ早く着きすぎる事に何の問題も感じなかった事もあって、母親が呆れるほど早い時間に家を出てきて、誰もいない教室で机に突っ伏していた。
学校までの片道15分ほどの徒歩で火照った体が冷め始めて、眠気が感じられた頃合いに再び勢いよく教室のドアが開く音が聞こえてきた。
体を起こさず顔だけ音のした方へ向けてみると、床に両方の手と膝を付いている女子生徒の姿がそこにあって、その口からは「今日こそは勝ったと思ったのに~」と呪いの言葉を思わせる音が漏れていた。
その後の行動は前日と同じような感じで、違いと言えば自分の椅子を運ばずに左隣の席に堂々と座った事くらいだ。
休み時間ともなれば俺の所へやってきてはよくも話のネタが尽きないものだと呆れるくらいに喋っていた。
他の女子生徒と馴染めていないわけでないのに、何故に俺の所へ来るのか理解に苦しんでいる中で、やはり俺の事を知った上で話し掛けてきているのではないかという可能性が次第に大きくなっていった。
しかし、彼女との会話は殆ど世間話ばかりで素性に触れる内容が殆ど含まれていなくて、最初に話し掛けられてから新たに得られた情報といえば名字くらいだった。
多少の探りを入れてみようかと考えながらも、何か困る事があるわけでもないからと言い訳をしながら、下手な行動によって今の関係が崩れる事を恐れていた。
小学校時代の俺に関する話噂として流れている様子も、時折に見受けられるようになってきたし、数日と待たずに誰も寄り付かなくなると思っていたから、余計に自分から何か行動を起こそうという気にはならなかった。
噂が流れる中での微妙なバランスで続く楽しい学校生活が 7日目の夜に、母親が「そういえば、あの子と初めて同じクラスになったそうなじゃない」と言い出した。
誰のことだか分からずに首を傾げていると、母親が「昔に良く一緒に遊んでいた女の子がいたでしょ。幼馴染みの」と言葉を付け加えてくれて、俺の天敵とも言える男勝りな女の顔が頭に浮かんできた。
しかし、俺に喧嘩の仕方を教わった挙げ句に、その技の標的を常に師匠へ向けてくるような凶暴な女が自分のクラスに居た覚えがなくて、右に傾けた首を左へと捻っていた。
そんな俺の様子を見ていた母親が怪訝そうな顔で「あんた、あの子の名前を言える?」と聞いてきたので、ノリコという天敵の名前を答えると「名字は?」と続けざまに質問を投げ付けられた。
その質問に答えられずにいた俺に対して、母親が溜め息混じりに教えてくれた幼馴染みの名字を聞いて、色々な疑問が一気に解消される事になる。
そう、入学当初から俺に寄ってきていた女子生徒こそが天敵として恐れていた幼馴染みのノリコでだったわけだ。
そうと分かってしまった翌日、いつも通り誰もいない教室にいても机に伏せる気分になれず、礼によって 2番にて現れるだろうクラスメイトを待っていた。
行きよい良く扉を開けるパターンは既に終わっていて、普通に教室へ入ってきたノリコは居眠りの体勢を取っていない俺を見るやいなや「やっと分かったか、こんちくしょうめ」と頬を吊り上げて笑った。
その表情は悪戯に成功した悪ガキを連想させる笑顔で、会話の中で素性を探れなかった事も、違和感を感じながら確信へ近づけなかった事も、全てノリコの策略だったと物語っていた。
ノリコが語ったところによると、俺が彼女に気が付かなかった事への仕返しではなくて、女の子らしくなった証拠として何処まで気付かれないで過ごせるか試していたらしい。
俺は小学 3年を最後にノリコと顔を合わせて会話をしておらず、学校でも同じクラスになった事が 1度もなかったので、子供の頃の印象で完全に止まっていた。
その時代におけるノリコは男勝りの活発過ぎる女の子で、お淑やかになれと注意を受けるようなタイプだった。
色々と心境の変化があって女らしさに目覚めた結果、印象ががらりと変わってしまったために、人の名前と顔を覚えるのが苦手だった俺は全く気付かなかったわけだ。
中学に入学した時点で俺が知っていたノリコは彼女の中で黒歴史扱いだったらしく、幼馴染みの名字を知らないという失礼に対する怒りよりも、自分が大きく変われた事が照明された喜びの方が大きかったらしい。
俺としては掌で踊らされていた状況だったわけで、面白くなかったけれどふてくされる以外に何もできなかった。
ここまでで中学入学からの 1週間のエピソードは終わりで、中休みを挟んで 3日間に渡る連載は一段落だ。
何とか書き終わってホッとしているのだけど、楽しんでもらえたのかどうか少し不安も少しある。
連載を続けろと言われても困るから、コメントを下さいとか言いづらいのが悔しい今日この頃だ。
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