[小説:闇に舞う者] part31 ― 2011年05月22日 18時28分55秒
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http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2010/09/20/5357805
ルワンの瞳が再び開かれた時、ティティスとチェルニーがお互いの自己紹介も兼ねて身の上話に花を咲かせていた。
「そろそろ脱出するぞ。」
静かな声で呼びかけると2人の少女は話を切り上げて、緊張感の宿った視線を向けてきた。
ルワンはやや堅さの見られる視線を吟味するように受け止め、僅かに見つめ合ってから静かに立ち上がった。
2人もルワンにならって立ち上がって深呼吸を1回してから、ルワンの手に招かれて左右へ分かれて横へ並んだ。
「この繭と運んでいる蜘蛛を切り刻んで外へ出る。大して速度は出ていないから自力で着地しろ。いいな?」
「うん、わかった。」
「オッケー。」
ルワンが左右からの返事を確認してから右手をゆっくりと突き出し、指を鳴らした。
その瞬間から風の渦巻く轟音に包まれ、暗闇に入った亀裂が瞬く間に広がっていった。
指を鳴らす音が響いてから1回の呼吸も終わらない内に、繭は跡形も残さず切り刻まれて霧散していく。
目まぐるしく変化を始めた状況に沸き立つ興奮を押さえ込んでいると、見えない足場の下で黒い煙を上げる何かが滑り出してきた。
その正体は背を深く抉られた蜘蛛のモンスターで、傷口から血肉の代わりに真っ黒な煙を吹き出していた。
背の荷物が消えて、体も抉られても手足を動かし続ける姿は、まるで壊れた玩具のように感じられた。
炎が浸食していくように傷口は広がっていき、瞬く間にモンスターの全身から煙に包まれ、何も残さずに空気に溶け込んでいった。
「足場が消える。飛べ。」
ルワンの声に反応して2人の少女が見えない足場を蹴って中へ飛び上がる。
重力に縛れての降下が始まり、先ほどまで足場のあった高さを呆気なく通り過ぎていく。
足場が消えた事を理解すると同時に、近づいてくる地面との距離を必死に計り始めた。
ルワンが他の2人よりワンテンポ早く着地して、足音を立てる事で残る2人に距離感を掴む足掛かりを提供してやる。
ティティスは1歩目からしっかりと地面を捉えて砂埃を巻き上げ、チェルニーがスキップを繰り返しながら徐々に減速していった。
着地に成功してから周囲を見渡してみれば、空は薄い紫色に濁っており、曲がりくねりながら生えた樹木ばかりが目に付いた。
歪な樹皮の表面は無数の爪痕が刻まれていて、そこからコケやキノコに浸食されて、不気味な雰囲気を漂わせていた。
怪しげな雰囲気にチェルニーが肩を抱いて立ち竦んでいると、ティティスを従えながらルワンが歩み寄ってきて、頭に手を押いて軽く引き寄せた。
その手に導かれるままルワンの体に身を寄せると、少しだけ寒気が遠ざかった気がして安心できた。
「この地が闇の森と呼ばれる理由は理解できたか?」
チェルニーの頭に置いた左手から小さく頷く仕草が伝わってきた。
「寒気は常人にとって魔力が濃すぎる影響だからすぐに慣れるだろう。吐き気や目眩がしたら言え、休憩を入れてやる。」
急に大人しくなった2人が静かに頷いたのを確認してから、ルワンは普段よりも歩幅を小さく調節しながら歩き出した。
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http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2011/06/05/5897908
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ルワンの瞳が再び開かれた時、ティティスとチェルニーがお互いの自己紹介も兼ねて身の上話に花を咲かせていた。
「そろそろ脱出するぞ。」
静かな声で呼びかけると2人の少女は話を切り上げて、緊張感の宿った視線を向けてきた。
ルワンはやや堅さの見られる視線を吟味するように受け止め、僅かに見つめ合ってから静かに立ち上がった。
2人もルワンにならって立ち上がって深呼吸を1回してから、ルワンの手に招かれて左右へ分かれて横へ並んだ。
「この繭と運んでいる蜘蛛を切り刻んで外へ出る。大して速度は出ていないから自力で着地しろ。いいな?」
「うん、わかった。」
「オッケー。」
ルワンが左右からの返事を確認してから右手をゆっくりと突き出し、指を鳴らした。
その瞬間から風の渦巻く轟音に包まれ、暗闇に入った亀裂が瞬く間に広がっていった。
指を鳴らす音が響いてから1回の呼吸も終わらない内に、繭は跡形も残さず切り刻まれて霧散していく。
目まぐるしく変化を始めた状況に沸き立つ興奮を押さえ込んでいると、見えない足場の下で黒い煙を上げる何かが滑り出してきた。
その正体は背を深く抉られた蜘蛛のモンスターで、傷口から血肉の代わりに真っ黒な煙を吹き出していた。
背の荷物が消えて、体も抉られても手足を動かし続ける姿は、まるで壊れた玩具のように感じられた。
炎が浸食していくように傷口は広がっていき、瞬く間にモンスターの全身から煙に包まれ、何も残さずに空気に溶け込んでいった。
「足場が消える。飛べ。」
ルワンの声に反応して2人の少女が見えない足場を蹴って中へ飛び上がる。
重力に縛れての降下が始まり、先ほどまで足場のあった高さを呆気なく通り過ぎていく。
足場が消えた事を理解すると同時に、近づいてくる地面との距離を必死に計り始めた。
ルワンが他の2人よりワンテンポ早く着地して、足音を立てる事で残る2人に距離感を掴む足掛かりを提供してやる。
ティティスは1歩目からしっかりと地面を捉えて砂埃を巻き上げ、チェルニーがスキップを繰り返しながら徐々に減速していった。
着地に成功してから周囲を見渡してみれば、空は薄い紫色に濁っており、曲がりくねりながら生えた樹木ばかりが目に付いた。
歪な樹皮の表面は無数の爪痕が刻まれていて、そこからコケやキノコに浸食されて、不気味な雰囲気を漂わせていた。
怪しげな雰囲気にチェルニーが肩を抱いて立ち竦んでいると、ティティスを従えながらルワンが歩み寄ってきて、頭に手を押いて軽く引き寄せた。
その手に導かれるままルワンの体に身を寄せると、少しだけ寒気が遠ざかった気がして安心できた。
「この地が闇の森と呼ばれる理由は理解できたか?」
チェルニーの頭に置いた左手から小さく頷く仕草が伝わってきた。
「寒気は常人にとって魔力が濃すぎる影響だからすぐに慣れるだろう。吐き気や目眩がしたら言え、休憩を入れてやる。」
急に大人しくなった2人が静かに頷いたのを確認してから、ルワンは普段よりも歩幅を小さく調節しながら歩き出した。
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節電の 強い味方の 扇風機 ― 2011年05月22日 20時03分02秒
昨日の同窓生を集めての飲み会へ参加するため秋葉原へ向かう途中で、壊れて廃棄済みの扇風機を新調するために池袋で寄り道をした。
扇風機に関しては昨日に大きな違いもないはずなので、数分で品選びが完了すると見積もっていたのだけど、今年の夏は節電が強く求められている影響で、季節家電の需要が高まったらしく混雑していた。
多少の混雑なら予想していたのだけど、整理券が配られて15人待ちを要求されるとは思いもよらず、去年11月のエコポイント減額前の安売り商戦の序章を見ているようだった。
池袋での滞在時間は30分ほどしか計算していなくて、扇風機の前に懐中電灯やマッサージ器などを見ていたため、時間に余裕が無かったので飲み会が終わってから出直すことにした。
しかし、蓋を開けてみれば普段なら3時間で終わっていた飲み会が、半年ぶりの開催だった影響なのか皆のテンションが覚めやらなくて、気が付けば閉店時間までに池袋へ戻れない時刻になっていた。
月曜の仕事帰りに寄り道をして発注する選択肢もあったのだけど、土曜の状況を見とめぼしい商品が在庫切れとなる恐れも感じられたので、貴重な休日を使って今日の昼から出直してきた。
家を出ると強烈な雨の臭いが漂っていて、嫌な気配を感じながら自転車を走らせていると、駅まで後5分という地点に辿り着いた所で、瓶を引っ繰り返したような豪雨と、傘をへし折らんばかりの強風に見舞われた。
雨が本降りとなる前に駅へ着いておきたかったのだけど、風の影響でペダルが重かった事に加えて、突風にあおられて蛇行する自転車を避けたりと手間が多くて、希望とは大きく懸け離れた結果となってしまった。
しかも、本降りになると同時に突風の切れ目が消失して、自転車から降りていても傘が飛ばされないようにするのが精一杯で、腰より下が濡れてしまうのは仕方がないと諦めるしかなかった。
駅のホームで屋根の下にいても風が雨を運んできて濡れる始末だった。
池袋へ到着してからの買い物は順調に進んでくれて、待ち時間3分で順番が回ってきてくれたけど、危惧して日曜に買い物へ来て正解だったらしく、幾つかのカラーバリエーションで在庫切れとなっていた。
それも店舗内の在庫切れに留まらず、メーカーのレベルで品薄となっているそうで、このような状況が扇風機で起こるなど前代未聞だろうと思いつつ、自室とリビング用に1台ずつ発注してきた。
それにしても1万2千円もする扇風機があったのだが、値札を見た時点でスルーしたので何があるのか知らないけど、どんな無駄機能を搭載しているのか気になってきた。
ちなみにリモコン装備の扇風機は普通に出回っているらしくて、俺が注文した商品も意図せずしてリモコン付きだった。
扇風機に関しては昨日に大きな違いもないはずなので、数分で品選びが完了すると見積もっていたのだけど、今年の夏は節電が強く求められている影響で、季節家電の需要が高まったらしく混雑していた。
多少の混雑なら予想していたのだけど、整理券が配られて15人待ちを要求されるとは思いもよらず、去年11月のエコポイント減額前の安売り商戦の序章を見ているようだった。
池袋での滞在時間は30分ほどしか計算していなくて、扇風機の前に懐中電灯やマッサージ器などを見ていたため、時間に余裕が無かったので飲み会が終わってから出直すことにした。
しかし、蓋を開けてみれば普段なら3時間で終わっていた飲み会が、半年ぶりの開催だった影響なのか皆のテンションが覚めやらなくて、気が付けば閉店時間までに池袋へ戻れない時刻になっていた。
月曜の仕事帰りに寄り道をして発注する選択肢もあったのだけど、土曜の状況を見とめぼしい商品が在庫切れとなる恐れも感じられたので、貴重な休日を使って今日の昼から出直してきた。
家を出ると強烈な雨の臭いが漂っていて、嫌な気配を感じながら自転車を走らせていると、駅まで後5分という地点に辿り着いた所で、瓶を引っ繰り返したような豪雨と、傘をへし折らんばかりの強風に見舞われた。
雨が本降りとなる前に駅へ着いておきたかったのだけど、風の影響でペダルが重かった事に加えて、突風にあおられて蛇行する自転車を避けたりと手間が多くて、希望とは大きく懸け離れた結果となってしまった。
しかも、本降りになると同時に突風の切れ目が消失して、自転車から降りていても傘が飛ばされないようにするのが精一杯で、腰より下が濡れてしまうのは仕方がないと諦めるしかなかった。
駅のホームで屋根の下にいても風が雨を運んできて濡れる始末だった。
池袋へ到着してからの買い物は順調に進んでくれて、待ち時間3分で順番が回ってきてくれたけど、危惧して日曜に買い物へ来て正解だったらしく、幾つかのカラーバリエーションで在庫切れとなっていた。
それも店舗内の在庫切れに留まらず、メーカーのレベルで品薄となっているそうで、このような状況が扇風機で起こるなど前代未聞だろうと思いつつ、自室とリビング用に1台ずつ発注してきた。
それにしても1万2千円もする扇風機があったのだが、値札を見た時点でスルーしたので何があるのか知らないけど、どんな無駄機能を搭載しているのか気になってきた。
ちなみにリモコン装備の扇風機は普通に出回っているらしくて、俺が注文した商品も意図せずしてリモコン付きだった。
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