[小説:P★RS 半裸さん日記] part3 ― 2012年09月30日 20時41分36秒
第一話がこちらになります。
http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2012/09/17/6576628
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ドールが天井を蹴った急降下から繰り出した拳は、半裸さんの顔面を抉るように捉えました。
床へ転がったままのマザー君が思わず目を閉じてしまうほど、見事なまでに顔面を打ち抜いています。
半裸さんは殴られる覚悟を決めていた事もあって、辛うじて意識を繋ぎ止めてながら呻き声まで噛み砕いて受け止めます。
顔面にねじ込まれる拳の圧力に対して、床へ叩き付けられまいとエビ反りになりながらも必死に堪えました。
もう少しで堪えきれそう。
そんな気がした瞬間、ドールが全身を捻って圧力を掛けてきました。
その些細な心の隙間を突く圧力が、半裸さんの踵を床から引き剥がします。
唯一の支えを失った半裸さんの体は、エビ反りのまま腰を軸に回転し始めて、後頭部から床へ突き刺さります。
拳に続いて、今度は堅い物同士がぶつかり合う鈍い音が船内に大きく響き渡りました。
半裸さんは床へ後頭部を打ち付けたダメージから、目を白黒させながらも辛うじて意識を保っていました。
ここで追撃を加えられたら一巻の終わりだと焦りながら笑顔を崩さず、ドールを説得する方法をひたすら考えていました。
視界が暗転して幾つもの流星が飛び交う中で、半裸さんはどうしたものかと悩み続けます。
考えて、考え抜いている間に、ふと奇妙な事へ気付きました。
何故か、ドールの追撃が掛からないのです。
今なら半裸さんを確実にノックダウンできるのに、ドールは何もしてこないのです。
耳を澄ましてみれば、耳鳴りの雑音の中に荒い呼吸音が聞き取れました。
肩を上下させながら、痛む肺へ手を添えて苦しそうな姿が目に浮かぶ、そんな荒い呼吸でした。
優勢のドールが苦しんでいる事を知ると同時に、マザー君の診察結果に栄養失調の文字があった事を思い出しました。
何日もまともな食事を取っていなくて、激しく動き回れるほどの体力も残っていなかったのでしょう。
先程の拳はドールにとっての渾身の一撃であり、半裸さんを「もう立ち上がるな」と願いながら見詰めているのだと理解しました。
半裸さんは殴り倒されたままの姿勢で、ダメージが抜けて視界に光を戻ってくる時を待っていました。
暫くすると瞼の裏に飛び交っていた流星も収まり、麻痺していた感覚の多くが復活していきます。
立ち上げれる程度まで回復しても、ドールが呼吸を荒げている間は寝転がったままでいました。
戦闘が続くとして無茶がないように、話を聞く気になる余裕を取り戻してもらうように、そう願っての待機でした。
半裸さんが仰向けの状態から体を起こすと、床にべったりと座り込んだ姿勢でドールを見据えました。
「話をしようよ。」
変わらずの笑顔で話し掛けましたが、ドールはボールのように半裸さんの顎を蹴り上げます。
蹴りの衝撃を逃がしながら後ろへ転がりながら、その勢いを使って立ち上がります。
思うように足へ上手く力が入らず、やや腰を低くした前傾で体勢を安定させてから、ドールの方へ視線を向けます。
しかし、先程の場所にドールの姿は見当たりません。
殆ど動けないだろうと予想してだけに驚きましたが、同時に意外と元気な事を嬉しく思いました。
何処へ行ったのかと考えた瞬間に、半裸さんの野生が真下から危険を察知しました。
重心を安定させるため、腰を落として少し前傾姿勢になった半裸さんの懐、そこにドールが滑り込んでいました。
ドールは腰を低く構えてから、全身をバネのように使って、半裸さんの顎へ下からの攻撃を仕掛けてきます。
ドールの拳が半裸さんの顎に触れた瞬間、半裸さんも上体を反らして衝撃を逃がします。
半裸さんが浅いエビ反りになり、その胸元に右腕を振り上げたドールが浮いている状態になりました。
半裸さんはすかさずドールを抱き込めます。
優しく、暖かく、何時でも抜け出せる柔らかな抱擁です。
「ディーナちゃん、話をしようよ。」
半裸さんがドールを抱き締めながら、優しく語り掛けます。
一瞬の間を置いてから、ドールが腕を振り解きながら腹部に足を掛けて飛び退きます。
「ディーナって誰だ。」
ドールから嫌悪感の混じった言葉が飛び出します。
「今し方に考えた君の名前だよ。話し相手に名前が無いのは不便だからね。」
半裸さんの言葉にディーナと命名されたドールがキョトンとした表情を浮かべます。
勝手に名前を付けて困惑させるという説得の初手が成功した事に、半裸さんは心底から安堵しました。
ディーナちゃんが混乱して動きを止めた事で船内が静寂を取り戻した直後、ドアがゆっくりと開かれる音が聞こえてきました。
ドアの向こうにいる者が放つ只ならぬ気配が不気味な雰囲気を醸し出しています。
次へ
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ドールが天井を蹴った急降下から繰り出した拳は、半裸さんの顔面を抉るように捉えました。
床へ転がったままのマザー君が思わず目を閉じてしまうほど、見事なまでに顔面を打ち抜いています。
半裸さんは殴られる覚悟を決めていた事もあって、辛うじて意識を繋ぎ止めてながら呻き声まで噛み砕いて受け止めます。
顔面にねじ込まれる拳の圧力に対して、床へ叩き付けられまいとエビ反りになりながらも必死に堪えました。
もう少しで堪えきれそう。
そんな気がした瞬間、ドールが全身を捻って圧力を掛けてきました。
その些細な心の隙間を突く圧力が、半裸さんの踵を床から引き剥がします。
唯一の支えを失った半裸さんの体は、エビ反りのまま腰を軸に回転し始めて、後頭部から床へ突き刺さります。
拳に続いて、今度は堅い物同士がぶつかり合う鈍い音が船内に大きく響き渡りました。
半裸さんは床へ後頭部を打ち付けたダメージから、目を白黒させながらも辛うじて意識を保っていました。
ここで追撃を加えられたら一巻の終わりだと焦りながら笑顔を崩さず、ドールを説得する方法をひたすら考えていました。
視界が暗転して幾つもの流星が飛び交う中で、半裸さんはどうしたものかと悩み続けます。
考えて、考え抜いている間に、ふと奇妙な事へ気付きました。
何故か、ドールの追撃が掛からないのです。
今なら半裸さんを確実にノックダウンできるのに、ドールは何もしてこないのです。
耳を澄ましてみれば、耳鳴りの雑音の中に荒い呼吸音が聞き取れました。
肩を上下させながら、痛む肺へ手を添えて苦しそうな姿が目に浮かぶ、そんな荒い呼吸でした。
優勢のドールが苦しんでいる事を知ると同時に、マザー君の診察結果に栄養失調の文字があった事を思い出しました。
何日もまともな食事を取っていなくて、激しく動き回れるほどの体力も残っていなかったのでしょう。
先程の拳はドールにとっての渾身の一撃であり、半裸さんを「もう立ち上がるな」と願いながら見詰めているのだと理解しました。
半裸さんは殴り倒されたままの姿勢で、ダメージが抜けて視界に光を戻ってくる時を待っていました。
暫くすると瞼の裏に飛び交っていた流星も収まり、麻痺していた感覚の多くが復活していきます。
立ち上げれる程度まで回復しても、ドールが呼吸を荒げている間は寝転がったままでいました。
戦闘が続くとして無茶がないように、話を聞く気になる余裕を取り戻してもらうように、そう願っての待機でした。
半裸さんが仰向けの状態から体を起こすと、床にべったりと座り込んだ姿勢でドールを見据えました。
「話をしようよ。」
変わらずの笑顔で話し掛けましたが、ドールはボールのように半裸さんの顎を蹴り上げます。
蹴りの衝撃を逃がしながら後ろへ転がりながら、その勢いを使って立ち上がります。
思うように足へ上手く力が入らず、やや腰を低くした前傾で体勢を安定させてから、ドールの方へ視線を向けます。
しかし、先程の場所にドールの姿は見当たりません。
殆ど動けないだろうと予想してだけに驚きましたが、同時に意外と元気な事を嬉しく思いました。
何処へ行ったのかと考えた瞬間に、半裸さんの野生が真下から危険を察知しました。
重心を安定させるため、腰を落として少し前傾姿勢になった半裸さんの懐、そこにドールが滑り込んでいました。
ドールは腰を低く構えてから、全身をバネのように使って、半裸さんの顎へ下からの攻撃を仕掛けてきます。
ドールの拳が半裸さんの顎に触れた瞬間、半裸さんも上体を反らして衝撃を逃がします。
半裸さんが浅いエビ反りになり、その胸元に右腕を振り上げたドールが浮いている状態になりました。
半裸さんはすかさずドールを抱き込めます。
優しく、暖かく、何時でも抜け出せる柔らかな抱擁です。
「ディーナちゃん、話をしようよ。」
半裸さんがドールを抱き締めながら、優しく語り掛けます。
一瞬の間を置いてから、ドールが腕を振り解きながら腹部に足を掛けて飛び退きます。
「ディーナって誰だ。」
ドールから嫌悪感の混じった言葉が飛び出します。
「今し方に考えた君の名前だよ。話し相手に名前が無いのは不便だからね。」
半裸さんの言葉にディーナと命名されたドールがキョトンとした表情を浮かべます。
勝手に名前を付けて困惑させるという説得の初手が成功した事に、半裸さんは心底から安堵しました。
ディーナちゃんが混乱して動きを止めた事で船内が静寂を取り戻した直後、ドアがゆっくりと開かれる音が聞こえてきました。
ドアの向こうにいる者が放つ只ならぬ気配が不気味な雰囲気を醸し出しています。
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