[小説:P★RS 半裸さん日記] part82012年11月04日 19時44分16秒

第一話がこちらになります。
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「さて、ディーナちゃんの家族入りも決まった事だし、平常業務へ戻ってフレンドを磨きに行こうか。」
半裸さんはそう良いながら足を開いて、股の隙間からワリトちゃんを座面へ降ろすと、後ろへ下がって椅子から腰を外しました。
首を後ろへ反らして見上げてくるワリトちゃんの頭を撫でながら、黙々と調理中のマザー君を指さします。
「ワリトちゃんは昼食を済ませてからね。マザー君がフレンチトーストを作ってくれているから待っててね。」
ワリトちゃんはクンクンと華を鳴らして甘い香りを嗅ぎ付けると、足を前後へ待ち遠しそうに揺らし始めました。

半裸さんは愛くるしい待ち体勢に入ったワリトちゃんの頭をもう一度撫でてから、ディーナちゃんの方へ目を向けます。
「折角だし、ディーナちゃんも来るかい?」
「磨きって何をしに行くのさ?」
ディーナちゃんがふて腐れた顔で視線を在らぬ方向へ向けながら呟きます。
「このクリームを使って、フレンドさんの防具を磨いてあげるの。そうすると耐久力が少しだけ回復して、喜んでもらえるのさ。」
ディーナちゃんは半裸さんが自慢げに取り出した容器へ冷ややかな視線を向けます。
「それ、自分で使えばいいじゃないか。他人のために使う意味が分からない。」
「使いたくても使えないのさ。これは何種類も重ね塗りしないと効果が出ないの。そんで、ボクの細胞を材料に合成されているから、自分へ使っても同種扱いになって意味がないんだよ。」
半裸さんはクリームを自分の肌へ塗り付けると、直後に固まって剥がれ落ちて行きます。
「つまり、そのクリームは半裸ウィルスが主成分のコーティング剤なのか。なんだか、防御力は下がりそうで嫌だな。」
「人を病原菌みたいに言わないでおくれよ。ボクの半裸は個性、ポリシーだよ。人に強要するような事はしないさ。」
半裸さんは酷い言われように、頬を掻きながら苦笑しました。

「ディーナちゃんは色々と忘れているようだし、見物ついでに付いておいでよ。」
半裸さんはそう言ってディーナちゃんの手を取り、やや強引に玄関まで引っ張って行きました。
「難しい事は何もないから、パッと行って、サッと磨いて、スッと帰ってくるだけさ。ほんじゃ、行くよ。」
ディーナちゃんの返事を待たず、手早く玄関のパネルを操作すると、ドアに映像が映し出されました。
「これ、映像じゃないからね。飛び込めば、そこはもうフレンドのお部屋だよ。」
そう教えると同時にディーナちゃんの手を引いたまま、ドアの映像へ向かって足を踏み入れていきます。

ディーナちゃんが驚きの声を漏らす中、水でできた厚さ10cmの壁を通り抜ける感触の後、目を開ければ見知らぬ部屋へ立っていました。
後ろを振り替えってみれば、先程とは逆で裏口があるだろう壁にフレンチトーストを受け取るワリトちゃんの様子が映っています。
「誰も、居ないのか?」
ディーナちゃんは周囲を見回してから、小声で半裸さんに声を掛けました。
「そうみたいだね。とりあえず、磨きをやって帰ろうか。」
半裸さんがそう言って指さした先に、傷だらけのアウターの着せられたマネキンが置かれていました。
「このマネキンはこの部屋の人とそっくりなんだよ。」
そう言いながらクリームを手に取って、アウターの傷へ擦り込むように磨くと「キュッキュッ」と音が鳴りました。
「これで終わり。さ、戻るよ。」
ディーナちゃんの手を取って、再び有無も言わさずにドアの映像へ飛び込んで、自宅へ戻ってきました。

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