[小説:P★RS 半裸さん日記] part52012年10月14日 12時25分22秒

第一話がこちらになります。
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半裸さんはマザー君が蹴り飛ばされた時に散乱した医療器具を片付けて、テーブルと椅子を出して食事の準備を整えます。
片付けの横では、マザー君が輪切りにしたバナナを載せた食パンをトースターへ入れたり、湯を沸かしたりとしています。
ディーナちゃんは床に座り込んだまま、何事も無かったように動き回る2人を呆然と眺めていました。

床から裏返った傘のような棒が伸びて、先端が開いて丸いテーブルへ変形する頃になると、バナナの焼ける香りが漂い始めました。
ディーナちゃんの表情が甘い香りで酔ったように蕩けます。
その様子を微笑ましく見詰めながら、半裸さんは椅子を収納から引き出して、円卓を挟む格好で並べて腰掛けました。
「ディーナちゃんも椅子に座って待とうね。」
半裸さんが呼び掛けると、甘い香りを放つトースターから目を離さないまま、のそのそと椅子へ這い上がっていきました。

香ばしく甘い匂いが作り出す静か空間に「ギュルル~」と腹の虫が大きな鳴き声を響きます。
不意を突かれたディーナちゃんがビクッと体を震わせてから、半裸さんの方へ視線を走らせました。
目があった瞬間、半裸さんが恥ずかしそうに頬を赤く染めながら「鳴っちゃった」と笑います。
そして、焼き上がったバナナトーストが運ばれてくると、待ち切れないと言わんばかりに半裸さんの腹がもう一度鳴きました。

「腹の虫もうるさいし、冷めない内に食べようか。」
半裸さんはそういって出来たての甘い匂いを漂わせるトーストへかじり付きます。
ディーナちゃんは涎を口いっぱいに溜めながら、トーストを見詰め続けています。
「あれ、どうしたの?」
「お金とか、持ってない。」
「そんなの気にしなくていいよ。ぷちっと星はマザー君が居れば、食事に困る事がないの。だから、好きなだけ食べていいよ。」
寂しげな表情を浮かべるディーナちゃんに笑顔を向けながら「食べて、食べて」とサインを送ります。
10秒ほど見つめ合った後、ディーナちゃんがトーストへゆっくりと手を伸ばします。
トーストが近付くにつれて、焼けたバナナの香りに刺激されて動きが加速されます。
そして、一口を食べた瞬間から凄いペースで喉から胃袋へと流し込んで行きました。

ディーナちゃんはバナナトースト1枚では物足りない様子だったので、追加でハニートーストも焼かせました。
追加された1枚もあっさりと平らげると、夢見心地といった表情になっていました。
「満足したかい?」
半裸さんがそう問い掛けながら、持ち出したリンゴをディーナちゃんへ放り投げます。「うん、美味しかった。」
リンゴをキャッチしながら答えくれました。
手にしたリンゴへ口を付けない事から、遠慮している様子は見受けられません。
「そかそか、満足してくれたならマザー君も喜ぶよ。」
半裸さんが満面の笑みを向けると、ディーナちゃんは少し眩しそうに目を伏せてしまいました。

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