[小説:闇に舞う者] part702012年08月05日 20時13分53秒

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ティティスはルワンが運命を左右される選択を迫る時、今回のような口調で問うてくる事を知っていた。
問われる側が十分な知識と経験を持っていると判断した時に行われ、一切の質問を受け付けずに選ばれる時を待ち続ける。
どんなに残酷な選択肢であっても、問われた側が泣きじゃくろうとも、ルワンは微動だにせず待ち続ける。
運命を捻り曲げる力を持つ者として、委ねられる選択は当人に任せるための行動だと理解もしている。
それでもなお、目の前に突き付けられた選択肢に困惑して頭の中が白一色で染め上げられた気分だった。

ティティスはパニック状態を自覚して、目を閉じてて大きく深呼吸を繰り返していく。
その様子をチェルニーが心配そうに覗き込み、ルワンは魔導具を差し出して無表情のまま選択の時を待っている。
普段なら不安げなチェルニーへ笑顔の一つでも見せて安心させる所だが、今は自分の事を考えるだけで精一杯でだった。

冷静さを取り戻す為の深呼吸を繰り返しながら、過去に小説『赤の書』で読んだ場面を思い出していた。
殆どの場面において、選択を突き付けられた者達は一瞬だけ戸惑ってから、迷いもなく返答していた。
その迷いがない凛々しい姿は多くの読者を魅了して、『赤の書』における大きな見せ場の一つとなっている。
そんな憧れの場面に立ちながら、狼狽えている自分の姿を想像した瞬間、あまりの情けなさに気分が一気に沈み込んだ。
そのおかげでパニック状態からの抜け出せた事は怪我の功名だが、あまり醜態に軽く泣きたくなる程の羞恥心を覚えた。

ティティスは外法魔導具に対して、人心を惑わし、厄災を引き起こす悪の魔導具といった印象を持っていた。
魔族に身を売るのと同様、人の肉体を捨て、魂の有り様を変える行為への嫌悪感に由来する印象であるとも自覚している。
ルワンもまた魂の有り様を変える行為を好んでいないはずなのに、外法魔導具を手にしている事へ疑問が湧き始めた。
ルワンが納得するような理由を持って外法魔導具へ身を落としたのであれば、拒絶反応をおこす事もなく受け入れられる気がした。

「知りたい」
ティティスの口から小さく言葉を漏れ出た。
言葉が耳を通して全身を巡り、意識が一点に集中していく感覚を覚える。
その言葉の響きが全身を巡り、見えないほどに細い糸で繋がれた魔導具へ伝わっていく。
淡い響きは魔導具へ飲み込まれ、何十倍もの大きく強い意志が津波のような勢いで押し返されてきた。
ティティスは魔導具からの返事を受け取った瞬間に驚き、その直後に曇っていた表情が笑顔へ変わっていた。
「外法魔導具ルアル・ソリテルを貰い受けるわ。」
ティティスが真っ直ぐにルワンを見据えながら宣言して、差し出された魔導具を受け取る。
ルワンはその様子を心なしか嬉しそうな表情で見詰めていた。
「これから宜しくね、ルアル。一緒にルワンの役に立ちましょうね。」

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雨が降り 涼しくなると 聞いたのに・・・2012年08月05日 20時20分55秒

今日は雨が降るので日差しが少なく、気温の低い日曜にとなると天気予報が言っていたはずなのに、朝から眩しく焼けるような日差しに焼かれて目覚めた。
昨日の雨は夜の内に何処かへ流されたらしく、今日は大きな雲が流れてきても夕立さえ降らず、強烈な日光が突き刺さってくる暑い日曜となっていた。

天気予報で涼しい天気と聞いていたので、趣味の領域での創作活動へ存分に打ち込めると思っていたのに、午前10時で既にPCを起動できない温度まで室温が上昇していた。
俺の創作活動はPCを起動している事が前提となるため、このままではエアコンを稼働させない限りは何もできない。
かといって、自宅では頑としてエアコンを使いたくないので、結局はPCをきどうしないまま、コミックを読んだりしながら過ごしていた。

最も室温が高くなる14時は暑苦しくて本を読むことさえ辛くなったので、昨日に行く予定を雨に邪魔されて行けなかった買い物へ出掛けてきた。
目的地は普段の通勤で利用している駅なのだけど、道中で寄り道をするために遠回りしながら行くコースを取っていた。
寄り道の先では欲しかった商品が見付からず、冷房の効いた店内で涼んでいる時間の方が長かった感じで、目的の半分も済ませられないままの帰宅となる。

外の猛暑に焼かれている時間で暑さのピークが過ぎてたらしく、風が出てきた事もあって自室が多少なり過ごしやすくなっていた。
それでもPCを稼働させようとは思えない室温だったので、のんびりと録画を消化しながら夕方まで過ごして、普段より少し遅れた時間から小説の執筆を開始した。
やや遅れ気味だったけど、比較的に書きやすいシーンだった事や頭の中で整理も付いていたので、何とか時間内に掲載できるまで書き上がって安堵している。