[小説:闇に舞う者] part612012年04月01日 18時22分14秒

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http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2010/09/20/5357805

「素直と言えば聞こえも良いが、お前等の場合は盲信と呼ぶべきだな。」
ルワンが目の前で起きている変化に対して、苦笑混じりの一言を漏らした。
たった一言の呼び掛けによりチェルニーとティティスの状況は一変していた。
少女達を囲う結界の内側で、嵐の如く荒れ狂っていた魔導力は見る間に規則正しい流れへと変化して落ち着いていた。
今の魔導力は魔導具を握る右手より体内を巡り、体外へ放出されると空間を泳いで、最終的に魔導具へ戻っていく。
時の経過と共に空間を巡る魔導力の量が減少していき、体を這うような流れに至ると、全身が淡く輝いているように見えてきた。
浮き上がっていた体も地へと降り立ち、静かに深呼吸を繰り返すような呼吸へと変わっていた。

うっすらと開かれた瞼の奥、焦点の定まらない瞳がゆっくりとルワンの方へ向けられる。
その視線を受け止めたルワンが指を弾くと、乾いた音と共に少女達を守っていた結界が消滅する。
ティティスが左手を、チェルニーが右手を水平に掲げながら歩き出して、ルワンを追い越して前線へ立った。
少女達の掲げられた手を結ぶように魔導力が通い始めて、ルワンをヴァンの魔導力から守る壁となる。
「背を任せるぞ。」
ルワンは小さく呟くと、床へ腰を下ろして胡座を組み、九頭棍を膝へ掛ける橋のように乗せた。
ディーナは隠れていたルワンの胸元から飛び出すと、九頭棍の上に座って即座に瞑想を開始する。

ルワンが瞑想に入ったディーナとシンクロ状態を確立すると、魂が引き込まれる馴染みの感覚に覚える。
戦場の真っ直中でシンクロが行われた影響を受けて、多少のノイズを感じられた事もあり、目を開く際に小さく息が漏れていた。
目の前に広がる世界は『時の図書館』と呼ばれる精神世界で、ルワンとディーナしか入る事を許されない特別な空間であった。
空よりも高い書架が地の果てまで立ち並び、数え切れない魔導書で埋め尽くされている。
書架と魔導書を除けば、床と書斎机に椅子が在るのみで、蔵書以外に何も考慮されていないような世界が広がっている。

ルワンが椅子へ腰を下ろすと同時に1冊の魔導書が降ってきて、書斎机と衝突する直前で一瞬の静止の後に音を立てず着地する。
その後も同じように魔導書が降ってきて、瞬く前に5冊の本が書斎机の上へ集められた。
ルワンは集まった魔導書の表題を確認して、目的の術式が記載されたページまで紙を捲っていく。
目的のページを見付けると、そこを開いたまま書斎机の上へ戻して、次の魔導書へ手を伸ばす。
全ての魔導書を開き終える頃に書架の森から不安げな表情のディーナが出てきた。
「魔導書は揃っている。行くぞ。」
投げ掛けられた言葉を安堵の笑みを零したディーナが、差し出されたルワンの手に小さな手を重ねる。
その瞬間に先程と真逆の感触を覚えると、現実世界へと帰還していた。
書斎机の上に置かれた魔導書のページは、今も眺めていると錯覚するほど鮮明に脳裏へ焼き付いる。
術式を組もうと想像すれば、該当する内容の記載された魔導書が輝いて見える。
仮に書斎机に置かれた魔導書に記されていない術式を使おうとすれば、魔導力が乱れて失敗してしまう。

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充実と 疲労の中で 日が暮れる2012年04月01日 19時43分48秒

昨日に強風が吹き荒れれる天候の中で自転車を走らせて、通院やら何やらと動き回っていたのが辛かったらしく、寝付きが良かった上に朝10時まで爆睡していた。
Toda氏が調べた天気予報では今日も風が強いとの事だったけど、午前中は殆ど風もなく穏やかな天候となっており、日差しの暖かさが眠気を誘う春らしい陽気だった。

朝食を食べている時に同席していた父親がテレビの桜中継を見ながら、自宅近くの川沿いにある桜並木がもう散ってるとか馬鹿げた事を言い出した。
先週に見回った際は蕾も揃っていない状態だった上に、ここらの桜は東京の開花基準となる靖国神社の標準木よりも、1週間ほど遅咲きなので有り得ない話だった。
昨日の強風で咲きかけの桜が吹き飛ばされた可能性もあるけど、それは「散った」と表現すべきでない訳で、また何か可笑しい事を言っていると呆れていた。

確信を持って有り得ないと言いつつ、花見と称したサイクリングへ毎年出掛けている身としては気になるので、出掛けるついでに遠回りを覚悟で桜並木を見に行ってきた。
見に行った結果は予想通りに父親の間違えで咲きかけの状態で、極一部の異様に早咲きする桜だけ強風の被害に遭っていたけど、来週は満開の桜が見られそうだった。

桜並木の状態に安堵してから自転車の進路を床屋へと向けて、昨日に邪魔に感じた伸びすぎた髪を切りに行ってきた。
床屋へ向かう途中にも何カ所か桜があるので、小さな遠回りを繰り返しながら自転車を走らせたけれど、まともに開花している所は一箇所もなくて、見頃はやはり次の週末となりそうだった。
床屋の方は混雑しているかと思ったけど、意外と空いていたおかげで20分程度の待ち時間で順番が回ってきたため、暇潰しに持ってきたコミックを読み切れなかった。
中途半端に読み残すのも気持ち悪さを感じつつ、次なる予定があるのでそそくさと自転車を走らせた。

次に古本屋へ向かって、ブログ連載とは別に執筆する予定の小説に関して、キャラクターの原案者が提示したイメージを回収するため、指定されたコミックを立ち読みしてきた。
これでイメージが固められたら執筆へ大きく前進するはずだったけど、俺と原案者ので感じた部分へ大きな差があるらしく、逆に混乱するという結末を辿ってしまう。

アニメ化された際に偏ったキャラ付けが成された可能性も考えてつつ、母親の仏前に飾る花の購入という残っていた用事を片付けて、早々に帰宅しようと自転車を走らせた。
常連となっている花屋へ到着すると、あと30分で新しい花が入荷されるとの事で、どうしようかと悩んだ末に出直すという選択を取った。
時間までに一度帰宅して遅めの昼食を済ませて、再び花を購入するために出掛けるという手間を掛けて、文字通りに新鮮な花を購入して帰宅した。

ブログの連載は昨日に進めてあった分もあるので、先に別件のキャラ付けの方を優先したけど、頭の整理が付かないまま悶々として時間ばかり食う結果になっていた。
原案者に話を聞き直した方が良さそうだと思いなして、ブログの連載へ戻ったけれど頭の切り替えが間に合わず、こちらも悪戦苦闘するという悲劇に見舞われた。
何とか書き上げて公開したけど、今週末は妙に疲れる休みとなったと溜め息が漏れていた。