[小説:闇に舞う者] part462011年09月18日 20時25分52秒

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ルワンが一方的に攻める展開へ変わってからも、相手が2人も居る上に破壊を目的に攻撃している訳でないため、反撃を受ける場面も珍しくなかった。
反撃を受けると言っても狙いさえ定まらない攻撃魔法を撃たれる程度で、防御も間に合っている事もあり、実質的に無傷であった。
チェルニーの父親に埋め込まれた魔獣からの3度目の反撃を受けた直後に、彼の目に一瞬だけ弱々しくも意識の陰が見て取れた。
そこから魔法が放れた直後に魔獣の拘束が緩む隙が存在すると推測して、助言を踏まえた事実を魔導力に載せた言葉で伝えた。
新しい指示を飛ばすのに合わせて、攻撃魔法を撃てるように仕向けて、宿主の意志が表へ出てこれる隙を作りあげて、次なる変化を探し求めた。

通常なら魔法を放った直後に隙があったとしても、完全に肉体を乗っ取られた宿主の意志が表に出てこられるとは考えにくかった。
魔獣の拘束を振り解くほどの精神力の持ち主がいたとしても、縛られる前と後では雲泥の差があり、今夏のケースは異常と言える。
その点を踏まえて考察すると、魔獣が拘束を解いたと言うよりも支配権が宿主へ移りつつあり、その結果として自由を取り戻していると推測された。

何一つとして確証のない不確かな推論から始まった作戦に、結末が訪れるのも時間の問題という雰囲気が感じられるようになってきた。
先が見えても宿主の体力が尽き果てる危険性もあるため、念を押して支配権を一気に奪い取れる状況を用意する算段を模索する。
魔法を放った直後に隙が生まれると分かっているのだから、全ての魔獣による一斉攻撃の指示を出してしまえばよい。
攻撃の命令であれば混乱の中にある魔獣も従いやすい上に、隙の生まれるタイミングも掴みやすいといったメリットもある。
思い付いた作戦をすぐに伝えた直後、宿主の理性が攻撃に対して抵抗感を持つのでは無いかと不安に駆られた。
その点に関して魔獣の魔法攻撃を全て把握済みであり、ダメージを負う事はないと補足しようとした所で、魔獣が一斉に魔法を撃ち出す準備を開始した。

余計な手間を省けた事と信頼を勝ち得ていた事を喜びながら、魔法の一斉射撃へ備える素振りで距離を取っておく。
上手く指示が通ったらしく、魔獣は渾身の一撃を放とうと構え、今までよりも長い時間を掛けて魔法が練り上げられていく。
その一撃を警戒しているように見せるため、ルワンは重心を落として両手を前に突き出す形で構えた。
渾身の力を溜める魔獣の血走った目は怪しい輝きを帯びて、全ての魔力を惜しまず注ぎ込んでいる様子が窺い知れた。
あれほどの魔力を放った直後であれば、支配権の乗っ取りが失敗したとしても、燃料切れで動かなくなりそうに思われた。
つまり、次の一撃で作戦の成否に関わらず、チェルニーの両親との戦闘が中断される事が確定されると予想できた。

一斉射撃を待ち構えている間のルワンは、12体の魔獣が一度に渾身の一撃を放って来るという状況を楽しんでいた。
既に全ての魔法を読み切っているので、スリルを感じる事さえないのだが、雑魚と言えど全力での攻撃となれば歯応えも出てくるはずと期待していた。
作戦は既にルワンの手から離れており、結果を待つのみ状態であり、ヴァンへ気取られないよう小細工する意味も消え失せている。
それ故に目の前の状況を楽しむ余裕が生まれて、今や遅しと攻撃魔法が撃ち出される瞬間を待ち焦がれていた。

ルワンが距離を取ってから時間にして3秒弱、チェルニーの両親へ埋め込まれた合計12体の魔獣が一斉射撃を放った。
様々な角度から放物線を描きながら広がった魔法が、ルワンを目掛けて収束していく。
ルワンは正面へ突き出した両手より円盤状の障壁を展開して、真っ向勝負で受けて立つ構えを取った。
障壁へ着弾した魔法はその殆どが炸裂する事もなく弾き返されて、別の魔法と衝突して空を焼いて無力化されていく。
幾つかの魔法はその場で弾けるも、障壁を突き破ることは叶わず消え去った。
一斉射撃は第1波だけに留まらず、軽く100を超えそうな魔法が撃ち込まれる結果は変わらず、ルワンは平然と耐え抜いていた。

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昼食は 冷めて乾いた スパゲティ2011年09月18日 20時26分33秒

昨夜も寝苦しい夜となってしまい、十分な睡眠時間を得るために少し寝坊するくらいが丁度良いと思っていたのに、朝になると眩しい日光が顔面を直撃してくれたため、強制的に目覚めさせられる羽目となってしまう。
しかも、眩しさと暑さで寝ていられないと諦めて起きあがってみれば、枕にだけ狙い澄ました日光のスポットライトが当たっている状態となっていて、あまりにも正確な狙撃に感動さえ覚えるほどだった。
眩しさと暑さで完全に目が覚めてしまった事もあり、日差しを避けて二度寝する気分にもなれなかったので、未だに眠気で重たい瞼を持ち上げながらロフトを降りていった。

朝の涼しい時間に作業を進めておこうとPCの前へ座るも、気合いよりも眠気の方が勝っていて集中力が全く発揮されないまま、水分補給の度に吹き出す汗を拭いながら、今日も暑くなりそうだと溜め息を漏らしていた。
日差しの暑さに加えて風も弱まっていた事もあって、集中力を保てながらも根性でPCの前に居座り続けて作業をしていたけれど、13時からの暑さで電源ファンがフル回転を始めたので、クールダウンと昼食のためにリビングへ避難した。

昼食は外食で少し高カロリーの物を食べてくるつもりで、昨日は買い出しをしてこなかったのだけど、疲労と暑さで気力もなくなっていた事からスパゲティで済ませる決断を下す。
作るまでに火を使うので苦痛を伴うけれど、自室に比べれば台所でも3度ほど涼しい事もあって、コンロの前でも想像したほど苦痛を感じる事もなく過ごせてしまい、2階の暑さの異常さに呆れてしまった。
茹で上がったスパゲティを皿へ盛りつけて、食べようかと思った所で疫病神である姉貴が2階の自室から降りてくる気配がしたため、昼食を放置して避難する羽目となってしまった。

運の無さに涙が出そうな気分だったけれど、出掛けようとしているだけでリビングへ居座るつもりもなさそうなので、二度と帰ってくるなと願いながル邪魔者が消えるのを待ち続けた。
我が家の車を出そうとするも隣人の車が道を塞いでいたらしく、道路を開けてもらうのに手間取っている様子で、5分ほどリビングから見えてしまう場所に居座っていた。
その間に姿を見ることさえ嫌悪を感じるので、冷めていくスパゲティを眺めながら疫病神が消える時を待ち焦がれていた。

冷めて乾きつつあるスパゲティで昼食を済ませて、自室へ戻ってから作業を再開したけれど、事ある毎にPCがファンをフル回転させる事もあって中断を頻繁に繰り返して、集中力も何もない雰囲気で時間が過ぎてしまった。
おかげで作業の進捗が良くなくて落ち込み気味だけど、明日は台風の影響が出始めて日差しが緩むと聞いているので、明日に挽回できれば良いと期待している。