[小説:闇に舞う者] part402011年07月31日 18時09分40秒

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魔法が弾かれた事に全く動揺する素振りを見せず、突進してきて打ち込まれた2人の拳をルワンが片手で1発ずつ受け止める。
衝突の瞬間に接触面で闘気が弾けて衝撃を分散し、打撃力は衝撃波となって周囲へ拡散していった。
形状がバルディッシュだった時と違い、滲み出した闘気は極寒の吐息のように一瞬で空気に溶け込んで色を失っていった。
受け止めた拳をそのまま掴み、次の攻撃を仕掛けてこようとする体勢を捕まえた腕だけで崩して、同時に2人の動きを封じ込めた
ルワンは動きを封じた2人を近距離から注意深く観察していく。

埋め込まれた異形の顔は種族に統一性もなくそれぞれの個体に8つずつ、どれも中級クラス以上の魔族を素材として使われていた。
意識の統合されていない様子で、早くも次の魔法を用意し始めている顔も有れば、噛み付こうと首を伸ばしている顔まであった。
魔導力の流れを調べていたディーナから情報を受け取ると同時に、動きを制していた拳を放して後方へ飛んで距離を取る。
その直後に再び攻撃魔法が飛んできたが、先の攻撃と同様に手足を器用に使って全ての魔法を払って反らした。
5秒にも満たない時間の間に入手した情報を統合すると、異形の顔は肉体へ植え付けられただけでなく、魂にまで根が張り巡らされており、新しい個として作り替えられていた。
初見から想像していた通り、完全に元通りとする治療法が確立されていないタイプの改造であると断定された。
更に厄介な事は統治者が居ない事で、動きを封じるには全ての顔へ封印を施さなければならず、手持ちの魔法では数が足りなかった。
ルワンの場合は魔導力の特性的からも、封印のような手間の掛かる手段を好まず、手札にも少ないので非常に厄介な状況となっていた。

繰り返される攻撃を払い除けながら、使える手札の少なさに頭を抱えていると、後方に置いてきた2人が騒がしくなっている事に気付いた。
嫌な予感から全身を汗で湿らせながら振り返ると、チェルニーが障壁に張り付いて錯乱状態に入っていた。
その視線の先はルワンに襲い掛かっている者達に注がれており、この実験台とされた2人がチェルニーの両親なのだと理解した。
チェルニーが最も助けたかっただろう人物が既に過酷な状態へ陥れられていた事で、ルワンは自分の不甲斐なさに怒りを感じた。
「何が安心しろだ。」
怒りが言葉に滲み出して、握る拳に着けられた手袋がギュッと音を立てる。

闇の森に住まう者が他者と接触する機会は殆ど皆無と言っても良い。
それ故に人体実験に必要な素材が手に入らない事に加えて、命を弄ぶだけの魔導へ興味を持つような下衆な輩は居ないはずだった。
目指す所が善なのか悪なのかに関わらず、何かを極める者は物事へ取り組む情熱や真摯な態度が必要とされる。
闇の森に住まう者達はそういった真理を証明しているようであり、ルディア王国としても無闇に討伐の対象と見ていなかった。
ルワンは闇の森に住まう者達を、ほんの少しだけ道を違えてしまっただけの隣人として見ていた。
それだけにヴァンのような下衆が存在する事に怒りながら、隠れ里を襲撃する行為がモラルに反している事から、外から来た異端者の仕業と予測できなかった事を悔いていた。

沸々と煮えたぎる怒りが闘気へ燃え移り、精密な制御を必要とする黒衣の闘気術を乱し始める。
感情に依存した魔導力は心理状態と敏感に反応して様々な特性を生み出し、戦局によっては長所とも短所とも成りうる。
相手を傷付けずに抑えなければならない現状では、安定の対極に存在する攻撃性は、鏡面を乱す細波となって防御の邪魔をしていた。

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病み上がり 風邪も引いたし 大人しく2011年07月31日 20時19分23秒

胃カメラや大腸カメラによる検査で異常なしとの判定が出たわけだが、木曜に倒れた事実が否定されたわけでもないし、下剤により腸内を完全に空っぽにした事もあり、今日も自宅で休養している予定だった。
丁度良い具合に気温も下がっていた上に、治りにくい大腸の病気を心配していた不安が消えた影響もあって、昨夜は23時に就寝してからの寝付きがとても良くて、朝9時頃まで眠りを中断させずに眠り続けられた。
これで寝起きからの体調が良好なら文句なしだったのだが、残念ながら若干の熱っぽさに加えて、腸が動く度に盛大な音と不快な感触が伝わってくるため、あまり気分の良い目覚めとはならなかった事が残念だった。

腸が動く際に大きな音や不快感を伴ったりする現象に関しては、去年の食中毒で入院した際にも経験していたので、普段は有り得ない腸内が完全に空の状態だから起きるのだと理解できた。
しかし、熱っぽさの方は以前に経験した覚えがなかったのだけど、前回は病院で点滴を受けながらだったし、体調が最悪の状態だったので発熱に気付けなかった可能性もあった。
そのため午前中は腸内細菌の勢力争いでも起こっていて、その影響から体温が上がっているのかも知れないと想定して、朝食で忘れずにヤクルトを含めるなどの対応を取った。

正午を過ぎた辺りから発熱がピークを迎えると、鼻水が垂れ始めたりと別の症状が出始めた事から、病み上がりの体調ながら風邪を引いた可能性が浮上してきて、何をやっているのかと呆れながら休養していた。
風邪と思われる症状は2時間ほど強烈な眠気と鼻水として現れて、突発的に汗が滲み出すという経験を3度ほど繰り返して落ち着いて、早々に体調が戻ってくれたので安堵している。

今日の休養の甲斐もあって、昨日の検査終了後から感じていた頭痛も引いてくれたし、ここ最近に付きまとっていた気怠さも随分と軽減されており、明日からは日常へ戻れそうで安堵している。