[小説:闇に舞う者] part162011年02月06日 20時40分17秒

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2人の食いしん坊は顔を合わせたことで、食欲以外の感情に芽生えてしまったらしく、目の色を変えて鍋の中のスープを平らげてしまった。
作り置きの予定で4食分を作ったつもりだったので、ルワンは空になっていく鍋を見つめながら呆れるばかりだった。
「ふぅ、おなかがいっぱいで苦しいよ。」
「これだけ食べれば当然だ。度胸があるのは結構だが、加減やら遠慮ってもんを少し考えろ。」
チェルニーは傍目にも分かるほど膨れた腹をさすりながら、「あはは」と苦笑いを浮かべて、大の字に寝転がってしまった。
同じように腹を膨らませたディーナも、片付けをするルワンの太股に身を丸めて寝ころんでいた。
「そういえば、ちっちゃな人はいっぱい食べていたけど、お兄ちゃんは全然だったね。」
「こいつはディーナ、武器の妖精であり、俺の分身でもある。ディーナが食べた分は俺の腹へ入るからな。自分で食べる必要なったのさ。」
「あ~、それで自分よりも大きな器のスープを食べ切れちゃうのか。」
そんな話をしている間にも、ディーナの腹は目に見えて小さくなっていき、代わりにルワンが腹をさすり始めていた。
「食べた物の他にも記憶も受け取れるから、偵察役として飛んでもらう事もある。」
「つまり、お兄ちゃんは目と口が2人分あるのか。魔法は便利そうで羨ましいな。」
「受け渡しは触れている時に限定されるし、時間も掛かる。それに、ディーナの大食いに付き合うのはかなり辛い。」
この時点でディーナから転送されてきたスープは、ルワンの表情を曇らせる程の量へ達していた。
食休みのために寝転がったルワンを笑いながら、チェルニーが横へ転がって擦り寄ってきた。

暫くの間に続いていた沈黙をチェルニーが破り、少し振るえた声を投げ掛けてきた。
「ボクが起きた時、ディーナちゃんは何処へ行っていたの?」
「お前の足跡を追って、村の様子を見に行っていた。」
チェルニーの表情は前髪に隠れて見えなかったが、不安を感じている様子は力の籠もる指先と、小刻みに角度を変える猫耳から伝わってきていた。
「血の臭いはなかったが、人の姿もなかった。居たのは蜘蛛のモンスターだけだ。」
ルワンがチェルニーの頭へゆっくりと撫でんがら、緊張が解れるまで待ちながら言葉を選んでいった。
「ディーナは何度でも再生できるが、消されると俺に渡していない情報は失われる。だから、村の隅々まで見てきた訳じゃない。」
チェルニーの頭へ置いた手の動きを少し変えて、顔を上げるように促していく。
ルワンの胃を理解して、小さな瞳が見上げてくるまで1分ほどの時間を要した。
交差する視線に小さくも確かな覚悟が宿っている事を認めて、ルワンは余計な気遣いを捨てて言葉を続けた。
「村人は全て連れ去られたと考えて間違えないだろう。不幸中の幸いは敵が無傷での生け捕りを狙っていた事だ。」
互いに視線を外さないままの沈黙の中で、ルワンはチェルニーの言葉を待っていた。
「お兄ちゃんは強い魔法使いなの?」
「そうだな。」
「ボクが助けて、って言えば助けてくれる?」
ルワンはチェルニーへ向ける優しさを変えずに、無言のまま首を縦に振ってみせた。
「ボク達には何もお返しができないよ。それでも?」
「俺がそんな安っぽい男に見えるのか?」
チェルニーはルワンの胸板へ顔を押し付けてから首を横へ振って、声を絞り出した。
「お兄ちゃん、ボクの村を、ボクのお父さんとお母さんを助けて。お願い。」
「おう、任せろ。」

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我慢して 溜めた猶予を 使えずに2011年02月06日 20時51分46秒

昨日の午後はToda氏の自宅で執り行われた宴会へ参加して、のんびりとした時間を過ごしていた。
ここ最近に宴会が頻繁に開催されている理由として、参加メンバーの内で1人が忙しくなって参加できなくなりそうである事と、Toda氏が日本酒専用の冷蔵庫を購入した事情にある。
酒があるのに開催できる頻度が落ちるかも知れないのなら、忙しくなる前に宴会を楽しんでおこうという流れが起こっているわけだ。

去年の年末にエコポイント減額や地デジ対応といった諸事情により、液晶テレビとブルーレイレコーダーを購入した影響で、財政難に陥っている身としては頻繁に開かれる宴会は少し辛かったりする。
宴会と言っても酒にドクターストップが掛けられている身分なので、四合瓶1本に対してお猪口2杯という制約を課しているため、我慢する時間が辛い時もある。
それでも少しだけ日本酒が飲める事に加えて、気の知れた連中と過ごす時間が楽しくて、財布が厳しいと良いながらも当然のように参加している。

このところの宴会は色々な銘柄の日本酒を取り寄せて、飲み比べをしながら過ごしている事もあって、四合瓶1本に対して2杯という制約の中で少しでも美味しく飲むため、好みに合わない時は1杯だけでやめている。
そして、次に好みの酒が来た時に3杯を楽しむとかやっているのだけど、1本目玉の日本酒が美味しかったのにそれ以降が微妙だったため、最初に多く飲んでおけば良かったと後悔している。
最終的に四合瓶4本を開けておいて、最初に2杯を飲んだけれど、それ以降は1杯で留めており、制限を大きく下回る量しか飲んでいない事も含めて、24時間が経過した今でも悔しさが残っているほどだ。