[小説:闇に舞う者] part102010年12月12日 17時58分13秒

初めての方はこちらの記事からお読み下さい。
http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2010/09/20/5357805

ディーナの様子を窺いながらジリジリと前へ出てくるマリアーヌ王女の様子は、獲物を狙う獣ように見えたため、リーゼロッテ女王は「あれじゃ、怖がられて当然だ。」と額に手を当てながら溜め息を漏らしていた。
王女の接近に対してディーナが怯えだしてしまったので、再びパニック状態に入られても困るため、中空へ放り出して自由にさせてやると、さっと部屋の隅に置かれた花瓶の裏へと隠れてしまった。

「禁忌を犯されている懸念から魔石を持ち出してきたのだったな。」
名残惜しそうにディーナの隠れた方向を眺めている王女へ問いかけると、ビクッと身を震わせてから、首を縦に振りながら「はい、そうです」って答えた。
「問題の禁忌ってのは、死者蘇生の類じゃないのか?」
2つ目の質問に対しても肯定を表す仕草と短い言葉が返ってきた事を確認すると、ルワンはミシェルに幾つかの魔導具を用意するように指示を出した。
その横で壁際へ控えていたメイド達が部屋のテーブルや椅子を片付け始めて、部屋の中央に魔術を施行するのに必要な空間を用意した。
スペースの確保が終わると、クッキーとミルクティが用意されて、ディーナの隠れた花瓶の近くに置かれた。

「さてと、道具が揃うまで説明を済ませるとしよう。」
ミシェルが必要な魔導具を書き込んだ伝令符を発動させる様子を見届けると、ルワンは床の上へ腰を下ろしながら口を開いた。
他のメンツもメイド達が慌ただしく用意したクッションを受け取ると、ルワンと視線の高さを合わせて座った。
「まずマリアーヌの予知について、術式は自分の肉体を光体、物理から離れた魔導力の集合体へ変換した上で、未来を垣間見てくる仕組みだろう。」
「そうなんですか。私は先見の鏡を発動させているだけなので実感がありません。」
「先見の鏡は他人が室内へ居ると発動しない、断片的な映像が見える、予知に自分の姿を見る経験がある。それらの条件と今回の騒動が起こしうる可能性を考慮した上での推測だ。」
言葉を区切ると共に正面から視線を外して、メイドの1人へ「水をくれ」と声を掛けた。
目のあったメイドがコップに水を注ぐと同時に、小皿へクッキーを取り分ける様子を見ながら、横を向いたまま話を再開する。
「客人の持ち込んだ魔石は所有者を光体へ変換する力があって、先見の鏡と共鳴でも起こしたのだろう。その上でマリアーヌの術式で未来へ飛ばされた帰り、何らかの理由で振り落とされて取り残された可能性が高い。」
メイドの持ってきたコップを受け取り、小皿から4枚のクッキーを掴むと残りは要らないと、手で払うようなアクションをして見せた。
正面へ視線を戻すと青ざめていると想像していたマリアーヌが、意外と冷静に次の言葉を待っていた。
その反応が面白くないと感じたルワンは、話を再開する事よりクッキーを食べる方を優先した。

「察しているようだが、置き去りにされた先で客人は無事に肉体を復元しているはずだ。術式同士、術者同士の親和性が高くなければ、他人の術式へ紛れ込むなんて真似はできないからな。」
ルワンの話に胸を撫で下ろしながら、マリアーヌは小さな声で「良かった」と何度も繰り返し言葉を紡いでいた。

次へ
http://crimson-harberd.asablo.jp/blog/2010/12/26/5610115

寄り道で 予定が狂い 日が落ちた2010年12月12日 20時11分52秒

昨日の宴会で暴食をしてしまった事に加えて、風邪による不調が残っている印象もあったので、昼頃まで布団の中で過ごしていた。
無線ルータとワイヤレスユニットを購入してくる予定で、帰りが暗くならないよう午前中から出掛けるつもりだったのに、布団の中で考えながらも眠気と怠さに心が折れてしまっていた。
前日に食べ過ぎた影響から空腹感も殆ど感じないまま昼を迎えてしまい、日差しの眩しさから布団から出るも録画したアニメを見始めて、出掛ける準備が整った頃には14時を過ぎている有様だった。

金曜に文章が書けない症状に襲われた事を思い出して不安を感じながらも、池袋まで向かう電車に揺られながら小説の執筆に勤しんでみると、普段よりも快調に進んでくれて喜んでいた。
池袋へ打擲した後は本題の無線ルータを購入するよりも前に、本の探し物へ行ってきたのだけど、予想以上に入手困難だったようで見付からず、これ以上に探していると夜になってしまうと諦めるしかなかった。

本題の無線ルータとワイヤレスユニットの方は、液晶テレビの購入しに行った際に見繕っておいた事もあって、入店から10分と掛からずレジで会計を始めていた。
目的の商品を手にして店を出ると、早々と日が傾き始めたと一目で分かるほど空が薄暗くなっており、出遅れた上に寄り道で時間を食いすぎたと後悔しながら、急ぎ足で駅へと向かった。
幸いにして急行が入ってきた所だった事もあり、ギリギリで夜盲症の発動する前に帰宅できそうだと喜んでいたのだが、次の停車駅で下車という所で電車が緊急停車をしてしまう。

前の電車が人身事故を起こしてしまった場合、数十分に渡って運転を見合わせる可能性があり、夜盲症が発動してしまうと焦りながらアナウンスを待っていた。
幸いにして緊急停車の理由は踏切を渡りきれない老人だったらしく、3分もすれば動き出してくれたのでホッと胸を撫で下ろしていた。
しかし、カップラーメンが出来上がるまでの些細な時間であっても、目が見えるか否かの境界線に立っている人間にとっては貴重な時間で、駐輪場へ着いた時点で既に全力疾走のできそうにない暗さになっていた。

通勤と全く同じなので走り慣れた夜道ではあるけれど、最初から見えない前提で来ているのと、予定が狂って夜盲症へ陥っているのでは心構えが変わってくる。
しかも、ギリギリで見えている状態は時として見えているつもりで、見えていない事もあるので必要以上に精神を磨り減らす事となり、帰宅した時は安堵と共に魂が抜けるような疲労を感じていた。
それでも小説を書き上げなければならないので、必死にPCと睨めっこをして投稿を終えた時の達成感は素晴らしかった。

実際のところ、無線ルータやワイヤレスユニットのセッティングをしてなかったりするのだが、来週でも間に合うので考えない事にしてしまった。