[小説:闇に舞う者] part72010年11月21日 18時52分42秒

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ミシェルから報告を聞き終えると同時に、ルワンは大きな溜め息を吐いていた。
「つまり、事件に関しては何も分かってないというわけか。」
「残念ながらそうなります。ただティティス様が犯人ではなく、被害者である事だけは間違えありません。犯人となりうる可能性が最初から無かった事が油断となり、今回の事件へと発展しているのです。」
王族が招いた客人であったとしても、個室で二人だけにするような状況は通常であればまず考えられなかった。
油断や偶然といった因果が幾重にも折り重なって生じた軌跡のような状況は、謀略によって引き起こせられるとは考えられない。
ましてや入城の際に魔法封じの指輪を指輪を着けられていたティティスが、他人の行動や意思を操作するような謀略を巡らせる事ができようはずもなかった。

ルワンはミシェルやリーゼロッテ女王が考えを後追いするような考察の末に、結論を口にした。
「ティティスって奴が失踪した事件はもはや運命だったとしか思えない、ってわけか。」
「あの子が運命に絡め取られるなんて今でも信じられない気分だが、お前がタイミング良く帰還した事も関係あるのだろう。そう考えると少なからず納得できてくる。」
肩をすくめたり苦笑して見せたりと、余裕を見せつけるような態度を取りながらも、リーゼロッテ女王の目には真剣さが鋭さを増していた。
「ルワンよ、お前はどう思う?」
女王はルワンに1歩前に進みながら、重みのある口調で問いかける。
「戦いの中にのみ生きる者、宿命という神の呪いを背負いし少年よ。これはお前に関わる事件なのか?」
「お母様、お止め下さい。」
リーゼロッテ女王がルワンへ向かって更に1歩を踏み出そうとした瞬間に、2人の間へマリアーヌ王女が割り込んできた。
「お母様、ルワン様を責めるような発言はお控え下さい。」
声を震わせ涙を浮かべる王女の人目を見た瞬間から、女王の目に宿っていた真剣さが薄れていった。
「すまん、ルワン。私とした事が動揺してしまった。」
「錯乱に同様。母娘が揃いも揃ってルディアの王族とは思えない不始末だな。」
女王の発言を全く気にしていないと身振りで示しながら、軽い口調で謝辞さえも早々に流したルワンの態度は場の緊張感を解いた。

マリアーヌ王女がルワンの方へ向き直ると、2度ほど深呼吸をしてから話し始めた。
「ティティスさんと二人になって間もなく、先見の鏡との共鳴が始まって、薄れる意識の中で彼女の悲鳴が聞こえました。」
そこまで話した終えた所で苦しそうに胸元を握りしめて、再び大きく息を吸ってから話を再開する。
「予見は城壁の見える草原から魔性の森の奥へと進んでいって、座り込んでいる人影を発見した所まで終わりでした。」
失踪事件の際に何が起こっていたのか話し終えた所で言葉を切ると、固く握りしめていた胸元の生地を手放した。

「お前の意思に関係なく、先見の鏡との共鳴が始まったのか?」
「はい、そうです。意思に反してという点も、誰かが居る所で始まった事も過去に経験がない事です。それに・・・」
王女は目を閉じて記憶を掘り起こしながら、覚えている感触を吟味し直してから言葉を再開した。
「あの時の感触は予見とは違う気がします。私が門となり、船となり、ティティスさんを何処かへ運んで行ったような、そんな気がするのです。」

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締め切りに 怯えて筆を 走らせる2010年11月21日 20時24分44秒

今日は午前中に今週分の小説をアップロードを終わらせて、散髪に出掛けるのついでに昼食を外で済ませて、帰宅後はコミックやゲームを楽しみながらのんびりと過ごそうと思っていた。
しかし、寝起きから腹痛を感じた事もあって2度音をしていると、疫病神である姉貴が出した家を揺らすほどの騒音に叩き起こされてしまい、最悪の目覚めを経験してしまった。
その影響で午前中は眠気が抜けなくて集中できず、眠気覚ましも兼ねての外出で散髪を済ませてきたりと、予定が大幅に狂ってしまった。

小説の執筆活動の方でも頭が上手く働いてくれなくて、煮詰まった頭をリセットしようと息抜きを繰り返している間に、時間だけが進んでしまって現行が殆ど白紙のまま夕方を迎えてしまった。
そんなわけで今週も夕暮れに急かされながらの執筆となって、締め切りに迫られないと気合いが入らないパターンの繰り返してしまった。
もう少し余裕の持てる形で連載を進めたいと思う反面で、連載がそれなりに続いている現状を喜んでいる自分が居たりして、低レベルな部分で満足を感じている事が情けなく思えてしまった。

一度に多くを改善しようなんて無謀な考えを持つつもりはないけれど、せめて小説のクオリティを少しでも上げられる努力から、少しずつでも実践して行けたらと思う。
その手始めが時間に余裕のある執筆なのだけど、最近は体調を崩しやすくなっている事もあって、何かと時間が足りなくて思うに任せない日々が続いている。
腹痛の方は随分と良くなってきたので、今度こそは平日に下書きを書きためておいて、週末に仕上げるという理想的な執筆活動を実現できるように頑張りたい。