[小説:闇に舞う者] part42010年10月31日 18時44分59秒

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ドーラ・クレイドルから王都へと続く街道を全長50m程の光が駆け抜けていく。
その正体は手の平に収まる大きさの分銅を先頭に伸びる鎖であり、先端で細かく爆発音を繰り返しながら中空を飛行していた。
鎖の部分を注意深く見つめてみると、分銅の根本から新たな輪が生成されて、加速と同時に伸びるながら前進を繰り返している。
そのため前進する様を正確に表現するならば、中空に浮かびながら高速で伸び続ける鎖と言うべきだろう。

鎖の後尾へ視線を向けると、中空に浮かぶ鎖の上に立つ少年と、その肩に担がれながら目を回している2人の少女が見えてくる。
少年は手にした草刈り鎌の柄から伸びた鎖の上に立つ格好となっている。
草刈り鎌の柄は分銅と逆に鎖を飲み込みながら、代わりに先頭へ向かう魔導力の流れを発生させている。
鎖の上に立つ少年は柄から発生する魔導力の流れに乗り、滑るように川下りの要領で移動していた。

街道を駆ける鎖鎌を操る少年こそがルワンであるのが、14歳と言う年齢もあって顔立ちに若干の幼さを残しているため、女王の信頼を受けているとは思わない者も居たかも知れない。
しかし、彼の猛禽類を思わせる鋭いさを宿した眼差しや、赤くて癖の強い髪質から炎のように逆立った髪、更に研ぎ澄まされた魔導力の輝きが少年の外見年齢を引き上げていた。

ルワンの肩に担がれた二人の少女はリーゼロッテ女王の使いとして出されたミシェルの部下であり、つい先ほど放たれた魔導力の影響で失神してしまっていた。
ルワンが両肩を上下させ、目を回している二人の腹を突き上げる。
「お、起きましたです」
「苦しいです~」
左右から別々に呻き声が聞こえた所で、ルワンは手にした鎖鎌へ通う魔導力を変化させた。
それによりルワン達を運んでいた魔導力の流れが緩やかになり、減速が始まった。
減速によって生じた慣性を圧力として感じている中で、肩に乗っていた重みが徐々に緩くなっていく感覚があった。
意識を取り戻したばかりの二人は頭の回転が追いつかず、自分の体が浮き上がりつつある現状を把握するまでに時間が掛かってしまった。
それ故に状況を理解した瞬間は慌ててルワンの体へしがみついた後になって悲鳴を上げるという混乱を見せていた。

肩に掛かる重量が元に戻った事を確認した所で、ルワンは減速のペースを更に早めた。
「城を飛び越える所までは乗せてやるが、着地は自分等でどうにかしろ」
目覚めと同時に放り出される恐怖を味あわされた二人は、必要以上に力強くルワンにしがみつきながら揃って首を縦に振って応えた。
それから肩に垂れ下がる体勢を改め、腰回りに足を着いて背中へ胸を押し付ける格好へ入れ替えた
ルワンの肩へ腹を押し付けている体勢では、城を飛び越える上昇の際に、ダメージで意識を失ってしまいかねないためだ。

二人が体勢を入れ替え終わった頃になると、前方に王都の影が微かに見え始めて、1分と待たずに開け放たれた城門が見えるまでの接近していた。
「良かった。ちゃんと開いてますね。」
「ですです。」
「閉まっていても、潰れるのはお前等だけだがな」
両肩から聞こえてきた安堵の声に対して、八つ当たり気味の嫌みを漏らす同時に、先を飛んでいた分銅を引き戻して、肩の脇で2回転させて再び前方へと投げはなった。
今度の分銅は城門を通り抜けた地点から急上昇する弧を描いた。
その軌跡から自分達が辿るルートを確認すると、ルワンの背にしがみついていた二人が手を繋いで魔法を発動させ始める。

城門を通り抜けた次の瞬間、既に3人の城を見下ろす程の高さまで飛び上がっており、ルワンは鎖の描く軌跡に従って、バルコニーの1つへ向かって急降下を開始していた。
その瞬間から残る2人は空へ投げ出される格好となったが、発動させておいた魔法を用いて、宮中で煙を立てながら上昇方向の慣性を打ち消して、ルワンの向かったバルコニーへと降りていった。

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寝起きから 耳の不調が 身に染みる2010年10月31日 20時00分45秒

ここ数日に体調不良が続いていた影響による疲労感と、昨日の通院で担当医が悲鳴を上げるほど耳の悪化していた事もあり、今日は休養日と定めて昼近くまで寝ているつもりで布団へ入った。
しかし、朝になると担当医が悲鳴を上げた理由を思い知らされる耳からの強烈な不快感と共に目覚めてしまい、体調が悪いのだからと二度寝を試みようと1時間ほど頑張ったけれど失敗に終わってしまった。
幸か不幸か完全なる目覚めを迎えていたおかげで、処方された点耳薬の存在を思い出せたので、少しでも耳の状態が良くなるように祈りながら薬液を耳の中へ摘果して10分を待った。

今回の点耳薬は前回に処方よりも少し強めになっているけれど、即効性のある薬でもないので効果が出るまで時間が掛かるはずだが、偽薬効果なのか処置が終わった時点で少し調子が良くなった気分になっていた。
朝食は昨日の内に用意しておいた焼きそばを食べて、自室へ戻ってくると聴力に若干の回復が見られたけれど、その代わりに眠気とは違った形で意識が薄れる感触に襲われるようになった。
元より休養日と定めていたので具合が悪くても困らないのだが、午前中に小説の執筆の方を片付けてしまいたいと考えていたため、若干の抵抗を試みたけれどソフトを起動する前に敗北してしまった。

気力も思考力も萎えてしまった状態に呆れながら、予定を録画を消化する方へと変更して回復を待つことにしたのだが、夕暮れ時を迎えても大した変化が見受けられないままだった。
危機感と責任感から小説を執筆するために使用するワープロを起動して、執筆活動を開始したけれど思うように書き出せなくて随分と苦労させられてしまった。
それでも無理矢理に手を動かしている内に、少しずつ頭の回転が戻ってきたようで、どうにか投稿する事ができたものの何時にも増して不満のある文章となってしまっていた。